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コラム
» 2005年06月27日 13時44分 公開

MSの“どこでもプレゼンス計画”は脅威でも何でもない

IMでおなじみのプレゼンス機能をデスクトップ全体で使えるようにするMicrosoftの計画は、電話のナンバーディスプレイと同じくらい日常の一部となるだろう。

[David Coursey,eWEEK]
eWEEK

 自社アプリケーションに“プレゼンス機能”を付け加えようというMicrosoftの動きを、「毎度おなじみの、人々を服従させることをたくらむ計画の現れだ」と見る人がいることは理解できる。

 しかしこうした批判はMicrosoftだけに向けられているわけではない。文明を根底から変えてしまうもの、変えないものの例が、最近の通信技術に関するもので恐らくもう一つあることにわれわれは気づいた。それがわれわれにとって、よい教訓となるだろう。

 何のことかというと、Microsoftとはまったく関係のない、電話会社による「Caller ID」(ナンバーディスプレイ機能)のことだ。電話をかけた際に自動数字認証データが(相手に)送信される――批判的な向きによれば、これは電話キャリア業界による人類征服計画だった。

 幸いなことに、人類はそれに屈服しない力があることを証明し、何とか生き残ることができた。

 電話に出る前に相手が分かるCaller IDは、社会規範を乱す脅威であるとの批判も出た。間違った番号をかけたことに気付いてすぐ電話を切っても、気分を害した相手から折り返し電話がかかってくることもあるからだ。

 外からかかってきた電話番号をすべて記録し、自動テレマーケティング企業に提供するサービスも開始されるはずだった。Caller IDに対する非難の1つ1つは覚えていないが、唯一納得し、今でもそう思っているのは、このサービスは得られるものに対して料金があまりにも高すぎるということだ。

 一方、Caller IDディスプレイによって、留守電を聞かなくても外出中に誰から電話があったかが分かるのは便利なところだ。直接電話に出てしまうと(セールスの電話を遮断する)TeleZapperをすり抜けてくる勧誘電話があるため、そうした電話を避けたい場合にも便利だ。勧誘電話は留守電に回してからTeleZapperを起動させた方が簡単だ。

 仕事を片付けようとしている最中に、相手に伝えたいことすべてを口頭で列記する必要がなくなる点でもCaller IDは便利だ。

 Pizza Hutに電話をかけて自分のCaller IDを明示すれば、相手は電話に出るや否やわたしの住所、クレジット情報、そして以前注文した商品の情報を引き出すことができる。このため、特に頭が働いていないときには短縮ダイアルを押して「いつもの」と言って電話を切ることだってできる。人とのやり取りを制限することが最良の選択肢という場合もある。

 前述した通り、Caller IDは今日広く使われており、また誰もそのことを特別に意識していない。「プレゼンス」もまた、時間の経過とともに同じように大した問題ではなくなると、わたしは考えている。

 「プレゼンス」は、Microsoftが「仕事における新しい世界」に向けて掲げるビジョンのカギであり、グローバルネットワークをまたがったジャストインタイムコラボレーションを推進する。人々がいつ、どこにいようとも仕事ができるようにするという輝かしい目標に向けて歩を押し進めることだろう。ビデオカンファレンシングとビデオインスタントメッセージングを通じて示される「プレゼンス」によって、職場に顔を出す時間にうるさい企業の姿勢も緩和するかもしれない。

 仕事でインスタントメッセージング(IM)を使っている人々は、手が空いている人、空いていない人を見分けられるメリットの恩恵を既に受けている。これは何年も前から利用可能な「プレゼンス」の形態だ。即応性とゆるやかさの両方を兼ね備えた方法で質問できること――わたしは時間があるときに質問を送り、相手も手が空いてから答える――は、電子メールや電話よりもずっと効率が良い。無駄なおしゃべりも少なくなる――しかしわたしのような注意力散漫な人間にとっては、IMは今後も問題であり続けるかもしれない。

 プレゼンス機能は、デスクトップ全体にIM技術を付加するようなものだ。別個のIMクライアントを使う代わりに、メッセージングがアプリケーションの中から現れるようになる。

 これが単体版のIMクライアントよりも有用であるか否かをめぐっては議論の余地があるが、これを使用しないと決めた人間にとっては大したことではないだろう。Microsoftは――今日わたしたちがIMでそうしているように――「友だち」リストの参照方法を示し、クリックでメッセージを送れるようにしてくれるはずだ。

 「プレゼンス」に最も強い関心を示すのは、大規模で広範囲に分散している組織かもしれない。情報と体験をより的確に把握し、これらをより広範に提供する必要があるからだ。Microsoftでは、企業の組織図ではなくコンテンツ分析に基づいてユーザーが同じ類のプロジェクトに取り組んでいる人々を探し出すことができるデスクトップ試作版のデモを既に行っている。

 こうした類のやり取りは極めて有用であるとともに、企業のファイアウォールの外に拡張され、LinkedInといった有益なソーシャルネットワークのようなものを創出する可能性がある。

 適切に管理された「プレゼンス」は、わたしたちが日に何度も直面する障害を少なくしてくれる。ユーザーが今何をやっているかをデスクトップが監視できるのなら、その仕事を邪魔しても構わない人、後回しにしてもいい要求などをインテリジェントに決定できるはずだ。

 アプリケーションの中に「プレゼンス」を組み込めば、質問やコメントを伴ったコンテキストを共有しやすくなる。例えばMicrosoft Word内から質問を出せば関連情報のコピーも一緒に送られ、双方のユーザーが問題の文書を見ながら作業を進めるというコラボレーションが生まれるだろう。

 これをうまく機能させるためには多くの取り組みが必要だが、「プレゼンス」はその取っ掛かりとなる。そして、すべての準備が整う日も近いかもしれない。なぜなら、プレゼンス以外のほとんどの要素は既に存在しているからだ――まだ使い勝手が悪いとか、広く採用されていないといったことがあるとしても(これはSharePointのことだ)。

 ただしうまく導入しなければ、ある日突然プレゼンス技術が仕事に登場したら、いらいらするだろう。しかしMicrosoftが今日語っているのはまだほんの始まりであり、コンピュータが図らずも広げてしまった情報とプロダクティビティのギャップの橋渡し役としてより役立つようになる将来に向けた必要なステップなのだ。

 かつてのCaller IDがそうであったように、「プレゼンス」も当分議論されることになるだろう。しかし近いうちに、単なる新しいツールとして、しかるべきときに使われるようになるはずだ。

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