松下電池が発表した新型リチウムイオンバッテリーは、まさにPCにうってつけとも言える特徴をそなえた大容量化技術の成果といえる。実際に容量が向上するだけでなく、バッテリーの容量を効率よく使い切るという意味でも画期的と言える。同社は新型バッテリーの供給を2006年4月から開始する。
同社が開発したのは、リチウムイオンバッテリーの陽極素材にニッケル、コバルト、アルミの酸化化合物(NiCoAlO2)を用いたもの。従来はコバルト酸リチウム(LiCoO2)を使っている。また電解液にも新しい素材を用いているという。
新型バッテリーの特徴は、最低放電電圧が下がったことだ。放電開始時の電圧は従来型と同じ4.2ボルトだが、最低電圧は従来の3ボルトから2.5ボルトまで下がる(このため、定格の電圧表示も3.7ボルトから3.55ボルトへと若干下がることになる)。低い電圧でも安定して電流を供給できるため、従来よりも多くのエネルギーを取り出せるわけだ。
従来型と新型の容量差は定格で7%(最新の2.6Ahセルとの比較)。しかし、これは放電電力が5ワットの場合で、ノートPCの利用環境に近い12ワットでは、従来型と新型の差は大きくなる。従来型で12ワット放電を行うと、完全に容量を使い切る前に電圧が3ボルトに低下してしまうからだ。
新型バッテリーは充電後の保存性も高い。従来型では4週間放置すると10%程度の容量が失われていたのに対して、新型は駆動時間にほとんど変化が起きない。ことことは、「定格の容量差」以上に、実際にPCで使った場合の使い勝手や性能を向上させてくれる。
最低電圧が下がったことで互換性の問題が発生する可能性があるが、同社は、3セル直列の場合は既存の電源ICを流用できると説明している。
ただ、電力効率を重視した一部のノートPCには2セル直列で動作させるものもある。この場合、PCに供給される電圧が最低5ボルトになってしまうので、電源周りの設計やICなどの部品を見直す必要があるそうだ。インテルはこの問題解決に協力し、新型バッテリーを用いたノートPCの設計を容易にするコンポーネントの整備を促すという。
松下電池は、2007年には2ボルトまで安定放電が可能な陽極素材の開発を進め、現時点における最高容量のリチウムイオンセルに対して25%の容量アップを目指す。
これまでもバッテリーに関する新しい技術がいろいろと紹介されてきたが、いずれもドラスティックな変化を目指したがゆえに製品化が進んでいない。新しい切り口でリチウムイオンバッテリを改良した松下電池の新型セルは、非常に現実味のある技術だ。2006年の春の時点で、実際の製品に搭載される可能性はかなり高いだろう。
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