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Banias開発者に聞く、Intelの次世代省電力CPU技術IDF Fall 2005(1/2 ページ)

» 2005年08月29日 11時26分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 Intelは電力あたりパフォーマンスを重視した新アーキテクチャへと2006年後半に大きく舵を取る。しかし、その取り組みはすでに2000年から始まっていた。2000年夏、当時Intel上席副社長だったアルバート・ユー氏に、省電力対策が今後重要になるのではないかと質問したところ「専任のチームを作って熱設計電力と平均消費電力の両方を下げるプロセッサを開発している」という答えが返ってきた。

 このとき編成された省電力プロセッサ開発チームで、現場でプロセッサ設計チームをまとめたのが、現在はモビリティ事業本部副社長兼モバイルプラットフォーム事業部長となっているムーリー・エデン氏だ。その成果はその後、コードネームBanias、つまり初代Pentium Mとして2003年3月に市場へと投入され、Intel製モバイルプロセッサの主流となった。

 現在はモバイル製品のプラットフォーム全体の方向性を決める役割へと移っているエデン氏だが、元々はイスラエルの省電力プロセッサチームを率いていた技術者である。次世代の省電力アーキテクチャに関して、もっとも詳しい人物であるエデン氏に、「Yonah」そして「Merom」について話を伺った。

ムーリー・エデン氏 モビリティ事業本部副社長兼モバイルプラットフォーム事業部長のムーリー・エデン氏

ITmedia Intelは電力あたりパフォーマンスに優れたひとつのマイクロアーキテクチャを、サーバからハンドトップまで、全方位的に展開すると発表しました。そのオリジナルの設計はイスラエルの設計チームが行っており、これまで主流アーキテクチャの開発を任されてきたオレゴンの設計チームはマイクロアーキテクチャの構築に携わっていません。

 今回、Merom以外にも「Conroe」や「Woodcrest」、「Whitefield」といったプロセッサの概略が説明されましたが、これらもすべてイスラエルの設計チームが担当しているのでしょうか?

エデン氏 「いえ、そうではありません。確かにMeromはイスラエルで設計されましたが、他のプロセッサに関しては別のチームが設計を行っています。例えばオレゴンのチームはデュアル/マルチプロセッサの経験、サーバ向けプロセッサの経験が豊富です。マイクロアーキテクチャは同じですが、最終的なチップのデザインは彼らが行っています」

ITmedia 今回のIDFでは2008年に8時間のバッテリ駆動時間を実現するという目標が示されました。しかし、日本製のモバイルノートPCには標準バッテリー構成で12時間駆動できる製品もあります。そこまで極端ではなくとも、9時間という数字を実現している製品はあります。

 8時間という目標は、少々、控えめ過ぎるのではないでしょうか?

エデン氏 「8時間という数字は、米国であればBatteryMark、日本の場合はJEITAの標準テストに基づくものです。確かにすでにこの数字をクリアしている製品もありますね。しかし我々が目標としているのは、もっとありふれた、どのメーカーのノートPCであっても、モバイル性を重視したものならば一様に8時間以上のスペックにすることです

ITmedia Meromのマイクロアーキテクチャでは、整数演算だけで4命令同時発行できる、よりバッファの深いパイプラインになるとアナウンスされています。整数の実行ユニットに関して数は同じなのですか? またステージ数の比較ではより多くなるのでしょうか?

エデン氏 「ステージ数は14段です。ちなみにPentium IIIは11ステージでした(ただしニュースリリースでは12ステージとなっている)。またデュアルコア設計となったYonahは、コア間の同期やキャッシュの管理などもあるため、BaniasやDothanよりも少し増やしています。実行ユニットの数については、よりワイドにはなりますが現時点では答えられません」

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