宇宙旅行がここ数年でにわかに現実味を帯びてきた。JTBは8月18日、宇宙旅行の国内販売を発表。元ライブドアの榎本大輔氏も宇宙旅行に出発する。
民間の宇宙旅行会社も活気が出てきた。2001〜2002年に2人の民間人宇宙旅行を成功させた米Space Adventuresや、2008年春の宇宙旅行サービス開始に向けて準備中の英Virgin Galacticに加え、米Amazonのジェフ・ベゾス氏が設立した宇宙開発企業も、画期的な商用展開が期待できそうだ。
「IT長者が資金を投じてくれたおかげで、宇宙旅行が夢物語ではなくなった」――宇宙旅行のガイドブック「宇宙の歩き方」(ランダムハウス講談社、税込み1680円)の著者・林公代さんは話し、あと数年で、パンフレットを見比べながら宇宙旅行を選べる時代が来るだろうと予測する。
IT関連で稼いだ資産家が、億単位の宇宙旅行を購入し、次の開発資金を旅行会社に投じている。年内にも宇宙に飛び立つ元ライブドアの榎本氏は、PCソフトメーカーのプロジーグループの創業者。事業で稼いだ22億円を宇宙旅行に投じる。「宇宙でシャアのコスプレをしたい」と榎本氏は話していたという。
宇宙船開発にもIT企業家が深く関わる。宇宙船開発のコンペ「X Prize」で優勝した「SpaceShipOne」には、米Microsoftの共同創業者、ポール・アレン氏が資金提供。SpaceShipOneの技術はVirgin Galacticにも採用されている。米Paypalを創業したイーロン・マスク氏は、2002年にロケット開発会社「SpaceX」を設立した。「SlashDot」の宇宙開発関連の記事を見てロケット開発を思い立ったというジョン・カーマック氏は、ゲームメーカーID Softwareの創設者。国内ではライブドアの堀江貴文社長がX Prize財団の理事に就任。「火星旅行を実現させたい」などと意気込んでいる。
林さんは「IT関連の人にはSF好きが多く、宇宙への憧れが強い」と話す。加えて宇宙開発は、最先端技術への好奇心も満たしてくれる。「宇宙の歩き方」のインタビューでジョン・カーマック氏は「ソフト業界で新しく学べるものは減ってきた。しかし宇宙開発は知らないことだらけ」と話し、ITの最先端に立った人々が、次の知的なチャレンジとして宇宙開発を楽しんでいる様子が垣間見える。
莫大な資金を投じているIT実業家の多くは、ビジネスとしての成算も考えた上で参入しているという。例えばイーロン・マスク氏は、超低コストなロケットで宇宙旅行を可能にし、ビジネスを成立させようともくろんでいる。宇宙旅行がビジネスとして確立すれば、新規参入業者が増えて競争が加速し、宇宙旅行も価格低下していきそうだ。
「宇宙にはビジネスの芽が詰まっている」――米国のIT長者のような莫大な資産がなくても、宇宙旅行ビジネスに参入するチャンスはあるという。「宇宙でいかに快適に過ごすかという部分で、日本の強みが生かせる」
例えば、宇宙での食事。国際宇宙ステーションでは日本のカレーが大人気という。野口聡一さんが宇宙に持っていったラーメンは、日清食品が苦労の末開発した。日本の食品に関する技術はおいしい宇宙食に生きそう。宇宙で快適に過ごせる衣服の開発などもビジネスにつながりそうだ。
宇宙旅行が民間開放されつつあるといっても、かかる費用は数千万円から数十億円。月旅行に至っては100億円以上かかる。一般のIT戦士が「宇宙の戦士」になるのは難しい。
無料で宇宙旅行に行く方法はいくつかある。最も一般的なのは懸賞だ。日本でもキャンペーンを行ったペプシコーラのほか、米OracleはJava開発者コンテストの商品として宇宙旅行をプレゼント。自動車メーカーのVolvoや飲料メーカーなど、数社が宇宙旅行のプレゼントキャンペーンを行ってきた。「数千万円という費用は、企業のキャンペーン予算としてはそれほど大きくない」と林さんは話し、宇宙旅行のプレゼントキャンペーンは加速すると見る。
業績のあった社員に宇宙旅行をプレゼントする企業も登場した。ミツエーリンクスは、宇宙好きの社員に、宇宙旅行(高度100キロ以上のサブオービタル飛行、数年内に米国などで実現予定)をプレゼントしたという。宇宙旅行を上司にねだってみるのも、無駄ではないかもしれない。
無重力体験だけなら、豪華な海外旅行程度の予算で可能。国内でもダイアモンドエアサービスが、名古屋空港で無重力体験ツアーを実施している。価格は30〜40万円だ。
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