ITmedia NEWS >

「カトリーナ」で被災したITシステムの復旧――ホテルの場合

» 2005年09月02日 17時03分 公開
[IDG Japan]
IDG

 大型ハリケーン「カトリーナ」の被害に遭った米ルイジアナ州ニューオーリンズ市内にある3軒のホテルのデータシステムを移管し、基幹システムのオペレーションを再開させようと、オーナー企業のStarwood HotelsとResorts WorldwideのITスタッフが取り組んでいる。

 4人のITスタッフが復旧作業を開始してから5日経ち、3軒のホテル(カナルストリートにあるシェラトンホテル、同市内フレンチクォーターと市街地にある2軒のWホテル)はまだ平常営業に戻れる状態にはない。ただしデータバックアップ用ハードウェアなどの機器をほかの場所にあるホテルに移送する準備は整いつつある。

 3軒のホテルでは共通のITディレクター1名と通信スペシャリスト1名を配置している。シェラトンはこのほかシステムマネジャー2名、2軒のWホテルは共通のシステムマネジャー1名を置いている。

 「とにかく対処しなければならない」と、Starwood本社(ニューヨーク州ホワイトプレインズ)勤務の北米地域IT担当副社長、マーク・マクベス氏は語った。「担当チームは、自分たちの家が無事がどうかも分からないまま危機に対処し続けた」

 ハリケーンが上陸し、ホテルの宿泊客が安全上の理由からホテル内の宴会場に移動させられる中、ITスタッフは、基幹サーバやそのほかの機器を浸水から守るため、1階から上の階に移動させる作業に奔走した。開催予定のコンベンションや会議などのケータリング契約の情報や売り上げデータを含む現場データの予備バックアップを取る作業も完了させた。

 それぞれのホテルで立ち往生するホテル客を支援するために、ITスタッフは宴会場で電話とコンピュータをインターネットにつなぎ、(電気と通信回線が機能している間は)ホテル客が家族や恋人に連絡が取れるようにした。ハリケーンが接近し、ホテルの電子カードキーシステムを非常発電機を使って稼働させている最中でも、子供たちが楽しめるようにDVDプレーヤーとスクリーンを設置した。電子カードキーシステムを稼働させたため、宿泊客はハリケーンの最中でも部屋から個人の持ち物を取ってくることができた。

 「このチームの働きを本当に誇りに思う」とStarwoodのビル・オーツCIO(最高情報責任者)。「彼らは一貫してホテル客とそのほかのスタッフを最優先した。客からの要望にも素晴らしい対応をしたと思う。ITにありがちな問題をうまく抑制したようだ」

 マクベス氏によれば、ハリケーンとその後に続いた洪水の被害の復旧には長くかかることが明らかになった8月30日までに、ITスタッフらは長期的な災害対策計画を固め始めた。Starwoodは現在、3軒のホテルの営業、ケータリング、コンベンション関連のデータを、特別オフィスが設けられたアトランタのWestinホテル(Starwood所有)に社員の手によって移動させる準備を整えているという。

 こうしたデータが重要なのは、たとえニューオーリンズのホテルがすぐには営業再開できなくとも、Starwood社員が顧客と相談しながら、予定されているイベントの会場を南フロリダやアトランタなど米国内の別のホテルに変更できるからだ、とマクベス氏は説明した。

 また、緊急対策担当者などがハリケーン襲来時に誰がホテル内にいたかを把握する上でもこうしたデータは役立ち、人々の安全が確保される。「とにかく私たちはゲスト(とホテル従業員)を最優先させ、データはすべて二の次にした」(マクベス氏)

 同氏によれば、8月31日夜までに、宿泊客全員とホテル従業員の多くをホテルからバスで市外へと避難させた。

 Starwoodは現在、大型ハリケーンを経験したことのあるスタッフを世界中から集めてチームを結成している。「過去にこのような経験のある人々を集めており」、彼らの専門知識と経験をオペレーション再開に役立てたい、とマクベス氏は話している。

 データ移管と復旧に向けた取り組みは始められたが、これからやるべき仕事量は膨大だとStarwoodのオーツ氏は強調する。

 「今回は尋常ではない。当然のことながら(典型的な)災害対策では(2〜3日後、あるいは数週間後に)問題がさらに広がっていくことは想定されていない。今回の復旧作業は、1軒のホテルでこれまでに経験したどんなものよりも長くかかることは間違いない」とオーツ氏は語った。

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.