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UNIXに勝ったWindowsがLinuxには勝てない理由

» 2005年09月27日 10時27分 公開
[Steven J. Vaughan-Nichols,eWEEK]
eWEEK

 12年前、PC Magazine誌でPC UNIXの特集を監修し、担当編集チームのメンバーとともにConsensys、Dell、Interactive、SCO、Univel、Sun、NeXTのUNIXをレビューした。

 レビュー対象外ではあったがUHC、Microportなど、ほとんどの人が名前も知らないような会社のUNIXにも目を向けた。

 今では、そのうちのほとんどの会社がなくなっている。いまだにUNIX事業を展開しているのはSunとSCOの2社だけだ。

 何が起きたのだろう?

 WindowsがUNIXより優れていたわけではない。今ならそう言えるかもしれないが、1993年当時、UNIXの競合――と呼べるものがあったとすれば――は、Windows 3.1とNT 3.1だったのだ。

 特に当時のNTは、サーバOSの悪い冗談といった出来だった。

 さて、WindowsがUNIXに勝利したのには多くの理由がある。Microsoftがハードベンダーとソフトベンダーに協力を強い、拒めばWindowsやMicrosoft Officeを競争力ある条件で採用できなくしたから、という理由も決して小さくはない。

 だが、こうした裏取引と同じくらいMicrosoftの成功にとって重要だったこととして、Microsoftは勝つために不正をする必要がなかったということがある。UNIX企業同士が実にうまい具合に互いの首を絞め合ってくれたのだ。

 そう、UNIXのソフト開発標準を策定しようという取り組みはたくさんあった。だがそうした標準は、POSIX(Portable Operating System Interface)のように一般的過ぎて役に立たないか、あるいはUNIX戦争として知られるOpen Software Foundation対UNIX Internationalの企業連合間抗争に巻き込まれるかだった。

 UNIX各社が互いの追い落としに夢中になっている間、Microsoftは笑いが止まらなかった。

 UNIX各社がソフト開発の標準化で合意に達することができなかったため、独立系ソフトベンダー(ISV)は、UNIX市場全体に対応するために、アプリケーションを1つではなく半ダースも書かなければならなかった。

 皆さんなら、どっちを選ぶだろう? すべてのWindowsシステムで実行可能なアプリケーションを1つだけ書くのと、それぞれに品質保証とサポートの問題が異なる6種のアプリケーションを書くのと。

 驚くべきは、WindowsがUNIXを打ちのめしたことではない。当時のUNIX企業の多くが、まだ生き延びていることの方だ。

 Linuxは、UNIXとの比較で2つ大きな強みを備えて市場に乗り込んだ。1つ目の強みは、Linuxがオープンソースだったこと。

 実力主義のオープンソース開発の世界では、良いコードが生き残り、悪いコードは消えていく。

 2つ目の強みは、リーナス・トーバルズ氏がいたことだ。

 オープンソースのUNIXとしてはLinuxのほかにBSD系がある。だがBSD系OSのどれも、Linuxの成功の数分の一にも及んでいない。

 Linuxは、トーバルズ氏が唯一のリーダーであるために、いまだBSD系を悩ませている内部抗争というUNIXの古いわなにはまらずに済んでいる。

 Linuxの持つ強みがトーバルズ氏だけだったら、このOSの未来は心配だ。リーナスは素晴らしい人物だし偉大なプログラマーだが、Linuxの成功要因が彼の存在だけだったら、交通事故1つですべてが終わってしまう。

 だが、Linuxディストリビューターの多くは、UNIXの歴史から教訓を学んでいる。

 彼らは、オープンソースであることだけでは不十分だということに気付いている。オープンなOSの成功には、オープンな標準が必要なのだ。

 それが、Linux Standards Base(LSB)3.0のリリースが非常に重要であることの理由だ。

 これは、単なる「もう1つの標準」ではない。ISVが半ダースのLinuxディストリビューション向けにではなく、たった1つのLinux向けにプログラムを書けば済むようになることを保証するための標準だ。

 Asianux、Debian Common Core Alliance、Red Hat、Novellなど、大手のLinux団体・企業が、それぞれのディストリビューションをLSB 3.0に準拠させることで合意している。

 この動きによってLinuxは、Microsoftがどう出ようが、将来の存続を確固たるものにした。

 UNIX戦争で打撃を受けた者の1人として、この展開がどれほどうれしいか、言葉では言い表せないほどだ。

 掛かってこい、Microsoft。Linuxは準備万端だ。

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