CTIA Wireless I.T. and Entertainmentカンファレンスが開催されているサンフランシスコのモスコーニ・コンベンション・センター。会場に集まっているすべてのビジネスマンが魅力的で強力なデバイスを使って高速ネットワークに常時接続していることは容易に想像できる。では、McKinsey & Co.の調査で、携帯電話などの無線デバイスを2008年までに導入する計画の企業がわずか6%にとどまっているのはなぜか。
9月27日に同カンファレンスで行われた大企業での無線通信利用の現状に関するパネルディスカッションで、パネリストの業界幹部と企業のIT担当役員がこの問いを検討した。パネリストが挙げた答えは、一貫したIT戦略がそもそも欠如していること、セキュリティの懸念、無線技術のメリットに関する理解不足などだ。
PC産業の草創期のように、社員は自分の無線デバイスを会社に「こっそり持ち込んで」仕事のために使っていると、Intellisyncのセド・モハマディオウンCTO(最高技術責任者)は語る。ITマネジャーは「こうした動きをコントロールして企業プロジェクトにしなければならない。ITマネジャーの役割は、社員に技術を使うよう促すことではなく、技術の利用をコントロールし、計画的に進めて、企業の資産を安全に保護することだ」と同氏。
しかし、多くの企業はモバイルデバイスを統一的に運用していないと、コンサルティング会社McKinseyのアドバイザー、リード・ハント氏は語る。McKinseyの最近の調査では、米国企業の約50〜70%が、社員の個人用通信デバイスの利用経費を肩代わりするだけで、そうしたデバイス向けのサービスを企業として導入していないことも明らかになっているという。
CIO(最高情報責任者)などのIT担当幹部は、無線通信のメリットを有線通信との対比で強調しようとして行き詰まってしまう場合があると、Turner Broadcasting Systemのスコット・テスラーCIO兼CTOは語る。CIOはデバイスやネットワークではなく、用途に関して意思決定を行うべきだと同氏は指摘する。
「企業にとって重要なのは、CIOが戦略的な用途を確立することだ。その用途に無線通信が必要か、有線通信が必要かは大きな問題ではない」とテスラー氏。CIOはそうすることで、CFO(最高財務責任者)に派手なデバイスの生産性のメリットを売り込むのではなく、その重要な用途を新しい領域に展開することで得られる競争上の利点を訴えることに集中できるという。
Turner Broadcastingは最近、CNNの記者とプロデューサーに衛星電話を支給した。多大なコストが掛かったが、この衛星電話のおかげでCNNの記者は、昨年12月にアジアの一部地域を津波が襲った際に迅速に対応して記事を送信でき、しばしば競合他社に先んじたとテスラー氏は語る。
無線通信の導入に反対する人はセキュリティの懸念を理由に挙げることが多いが、今の時点ではこうした懸念はたいていは過剰なものだとIntellisyncのモハマディオウン氏は語る。「企業では無線のセキュリティの方が有線のセキュリティよりも簡単に確保できると言ってまったく差し支えない」
インターネットを介した通信には固有のセキュリティ上の問題があるが、ベンダーは、デバイス間で通信中の企業データを保護する方法の開発で成果を挙げてきていると、Verizon Wirelessの無線データ商品・事業開発担当副社長ジム・ストレート氏は語る。無線デバイスを社員に支給する場合には、企業はVPNや基本的な暗号規格などの技術を採用しなければならないが、これはかなり前から効果が認められている優れた対策だという。
企業によっては、無線デバイスに対応したサービスに対する顧客のニーズを認識して対応することで、IT部門がこの分野のノウハウをスムーズに獲得するというケースもあると、Fidelity Investmentsの最高無線責任者ジョー・フェラ氏は語る。Fidelityは1998年に、顧客がモバイルデバイスで投資信託を売買できるアプリケーションへの取り組みをいち早く始めたという。Fidelityはこの取り組みを生かし、自社の社員向けに無線対応のデバイスと社内アプリケーションを導入する最適な方法を見いだした。
何人かのパネリストは、何らかの規模で企業に導入されており、社員が電子メールやアプリケーション、音声通話をどこでも利用できる数少ないデバイスの1つとしてResearch In Motionの「BlackBerry」を挙げた。だが、個別のデバイスやネットワークよりも、無線通信を利用しやすく、かつ管理しやすくすることの方が圧倒的に重要だとモハマディオウン氏は話している。
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