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ヒットのカギはネットユーザーに託す――国内初のフリーDVDマガジン

» 2005年10月28日 16時11分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「“ハコ”を作ることしかできなかったのが正直なところ」――日本初の広告収入型無料DVD「codeNEO 創刊0号」を発行した凸版印刷の担当者は明かす。0号の制作費用は凸版の持ち出し。ビジネス化はこれからだ。

 タダでもらったDVDを「見たい」と思わせるにはどうすればいいか――ネットユーザーの知恵を借りながらヒキのいいコンテンツを模索。ブログやSNS(ソーシャルネットーキングサイト)を活用した口コミマーケティングも試し、DVDとネットと紙を組み合わせた“フリーペーパー”ブレイクの方程式を探す。

photo codeNEO創刊0号。紙パッケージ入りDVDに、コンテンツを紹介するカードが12枚同梱されている

 codeNEOは、凸版印刷、サイバー・コミュニケーションズ(CCI)、アマゾンジャパン、ヴィジョネアが中心となって開発した。広告入り紙パッケージに入ったDVDに、映画やアニメ、ゲームなどのプロモーション映像と、凸版が作成した独自映像を組み合わせて収録。PCのDVDドライブで再生すれば、情報をネット経由で取得したり、関連の商品をECサイトで直接購入できる。

 ターゲットは25〜35歳の男性。ネットをよく利用し、趣味にお金をつぎ込む層に照準をあわせた。長時間・高画質な映像を収録できるため、テレビCMでは表現しきれない商品の世界観を伝えられる。その上、ネットに接続したPCで見てもらえれば、コンテンツごとの視聴情報をサーバで集計でき、広告効果を定量的に測定できる――というのが広告媒体としての売りだ。

 10月17日に配布を始めた創刊0号は、視聴者の反応や広告効果を測るためのテスト版。「まずは“ハコ”を作るしかなかった」と、凸版印刷情報ビジネス開発本部 映像・ビジネス開発部 新事業開発チームの大石英司リーダーは明かす。長澤奈央さんオリジナル番組や小雪さんのインタビュー、劇場版「機動戦士ZガンダムII〜恋人たち〜」のプロモーション映像などを収録するが、「内容はまだ充実しきっていない」という。

 コンテンツは、ネットユーザーの声を聞きながら充実させていく方針だ。同社はcodeNEOの公式サイトをこのほど開設。掲示板で意見や感想を募っている。すでに数人のユーザーが参加し「こんなコンテンツなら見たい」といった要望やUIの改善策などを提案している。

 手にとってすぐに読めるフリーペーパーとは異なり、codeNEOは、家に持ち帰ってパッケージをあけ、PCのドライブに挿入してもらうという面倒なステップが必要。「どうしても見たい」と思ってもらえるコンテンツ作りを目指し、ネットユーザーの声に耳を傾ける。

口コミに賞金――ブログやSNSを味方に

 プロモーションにもネット上の口コミを活用する。codeNEOのPR動画をネットで公開し、ブログやSNSなどで自由に紹介・配布してもらうというマーケティング手法を取り入れた(関連記事参照)

 影響力の大きいユーザーに賞金が贈られるのがこの企画のミソ。コンテンツを視聴したユーザーは、配布元ユーザーの影響力を評価し、ポイントを与える。ポイント獲得数上位のユーザーに、賞金や賞品が贈られる仕組みだ。

 「企業はネット上の情報発信源に強い興味を抱いている」と大石さんは言う。影響力の大きいユーザーを特定できるこの仕組みを通じて、企業とネットユーザーが組んだプロモーション企画などへの道を開く。

「凸版だから」無料にできる

 ジャケット印刷やDVDのプレスは、印刷会社凸版の本業。「驚くほど低コスト」で制作できるため、無料配布も可能になったという。DVDや紙パッケージというリアル媒体を提供することで、ネットコンテンツだけでは不可能なパッケージを使った宣伝や、所有する喜びを味わってもらう。

photo ビニールパッケージ入りで配布する

 PCユーザーに確実に届けるため、創刊0号は全10万部のうち8割をアマゾンジャパンの商品に同梱して発送する。残りは映画館やビデオレンタル店など、コンテンツと相性のいい場所を選んで配布している。

 創刊1号は来年3月までに発行する予定。発行部数は20万部に増やし、ネットユーザーの声を色濃く反映させたコンテンツを収録する予定だ。

“広告だけではない”媒体に

 「これまでメディアにあまり出なかった面白いものを発掘したい」と大石リーダーは意気込む。創刊0号に収録したコンテンツのうち、コメディアンのラーメンズのショートムービーや、アニメ「アルツハイム」など、テレビではあまり見られない作品に対する反響が特に大きいという。

 ビジネスが軌道に乗れば、広告とは関係ない、独自の編集コンテンツを増やしていきたい考え。編集コンテンツが充実し、首都圏で50万部以上を発行するリクルートの25歳以上向け人気フリーペーパー「R25」のようなヒットを狙う。成功すれば、順次、女性など異なるターゲット層向けの無料DVDを開発していきたい考えだ。

photo 大石リーダー(中)と、情報ビジネス開発本部 映像・ビジネス開発部の木村尚子主任(左)、同部の辰巳祐里香さん

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