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「MSのフォーマット支持しないで」、Sunが米州に要請

» 2005年11月29日 15時05分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Sun Microsystemsは11月28日、マサチューセッツ州政府に対し、「MicrosoftのオープンXMLフォーマットはオープン標準として提出されたため、同州のオープン文書フォーマットの条件を満たす」という見解を考え直すよう求めた。

 Sunのコーポレートスタンダードディレクター、カール・カーギル氏が署名した書簡の中で、同社は、マサチューセッツ州が以前に「Open Document Format for Office Applications(OpenDocument)」仕様に移行すると表明した理由を心に留めておいてほしいと訴えた。

 IDG News Serviceが入手したこの書簡には次のように記されている。「マサチューセッツ州のプロセスは、州政府機関が作成した文書が、永久に各機関や州民によって保有される――プロプライエタリなソフトの新版がリリースされるたびに、文書の利用を継続するために交渉したり、金を払ったりする必要なく――ようにする取り組みとして始まった。市場の革新が活発になって、より優れた公共サービスを提供できるよう、公平な共同の場を作ろうという願いを持って始められた」

 この書簡は、マサチューセッツ州管理・財政部秘書トム・トリマルコ氏が23日に発行した声明文に対するもの。この声明文が発行されたのは、Microsoftが同社のプロプライエタリなOpen XMLフォーマットを2つの国際標準化団体に提出すると発表してから2日後のことだった。

 Microsoftは同社のOfficeスイートでOpen XMLを採用する予定だ。同社はこのフォーマットを標準として承認してもらうため、国際標準化機構(ISO)と欧州計算機工業会(ECMA)に提出した。

 MicrosoftはWord、Excel、PowerPoint向けOpen XMLフォーマットを、次期版Office(コードネーム「Office 12」)の立ち上げまでにオープン標準として承認してもらおうと力を入れている。トリマルコ氏は先週の声明文の中で、マサチューセッツ州は、Microsoftがこの計画を実現した場合、「Office Open XMLはわが州が受け入れられるオープンフォーマットの基準を満たすと楽観的に受け止めている」と述べている。

 このため、マサチューセッツ州がMicrosoft Officeから乗り換えるよりも、同スイートを使い続ける可能性が残されている。もしも同州がOpenDocumentに移行したら、Microsoft Officeから乗り換えることになる。同スイートはOpenDocumentをサポートしていないが、SunのStarOffice、IBMのWorkplace、OpenOffice.orgはサポートしている。

 OpenDocumentは構造化情報標準促進協会(OASIS)で開発されたXMLベースのファイルフォーマットで、テキスト、スプレッドシート、チャート、グラフィカル文書をカバーする。

 カーギル氏は書簡の中で、マサチューセッツ州が「新製品をいつか標準化団体に提出するという1社の約束」を根拠にOpen XMLを支持するのは「間違い」だとしている。そうではなく、既に標準として承認されているだけでなく、どのベンダーでも製品に採用できる――ISOやECMAの標準ではそれが認められていない――OpenDocumentを州文書の標準フォーマットとして支持する方向で進むべきだと同氏は主張している。

 「広く支持されている標準化団体で仕様が承認されてから、つまりすべての競合製品で利用できるようになり、受け入れられるレベルのオープン性が実証されてから、マサチューセッツ州はその標準を採用標準の1つとして含めることを検討するべきだ」(同氏)

 マサチューセッツ州の情報統括責任者(CIO)ピーター・クイン氏は9月に、州政府機関に2007年1月1日までにOpenDocumentに移行する計画を策定するよう求める提案書を完成させた(9月26日の記事参照)。その後、この計画に州職員や州民から一部反対があり、そうした意見の相違から、州議会と知事事務所では議論が巻き起こった。

 一方で、SunやIBMといったMicrosoftのライバルが率いるOpenDocument支持派は、同フォーマットを世界的な標準文書フォーマットとして推進する取り組みを進め始めた。これら企業は11月4日にIBMのキャンパスで取り組みをまとめるための会合を開いた。これにはクイン氏のほか、Apple Computer、CA、Intel、Google、Red Hat、Corel、Oracle、Adobe Systems、OpenOffice.org、NokiaなどのIT企業が出席した(11月9日の記事参照)

 政府機関は自分たちの利用しているソフトに対してますます標準コンプライアンスを求めるようになっており、Microsoftはこうした機関からの圧力にさらされている。同社幹部は、Open XMLを標準化団体に提出すれば、オープン標準ベースのソフトを求める公共機関から契約を獲得する役に立つだろうと語っていた。

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