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逆風下の好業績に現れた“中村改革”の成果

» 2006年02月02日 21時39分 公開
[ITmedia]

 松下電器産業が2006年3月期の連結業績予想を上方修正し、営業利益は1990年以来15年ぶりに4000億円台を回復する見通しだ(関連記事参照)。FF式石油温風器の不具合という逆風の中での好業績に、中村邦夫社長が進めてきた改革の真価が現れた格好だ。

photo 第3四半期決算を発表する川上専務

 同日発表した2005年10〜12月期連結決算は、売上高が前年比4%増の2兆3984億円と四半期では過去最高に。営業利益は同47%増の1294億円、税引き前利益は52%増の1261億円、純利益は同39%増の493億円だった。

 売り上げの半分を占めるAVCネットワーク部門では、PDPやカーエレクトロニクス、ノートPCが好調。プラズマテレビの販売は世界全体では前年同期比からほぼ倍増となる1483億円に拡大し、日本国内だけで408億円を売り上げた。「隠れたヒット」(川上徹也専務)というデジタルカメラ「LUMIX FX9」は8月の発売以降、週間シェアの上位3位に入り続け、12月は月間でもトップになったという。

 通期業績の上方修正は、好調なデジタル家電を中心とした増収に加え、コスト削減や合理化による固定費削減が大きい。PDPなどは2割強の価格下落に見舞われたが、これを上回る材料の合理化や固定費削減で補った。

 2001年度から進めてきたバランスシートの改善も進み、在庫を約2000億円圧縮したほか、一時は3000億円を割り込む水準にまで落ち込んだネット資金が1兆4000億円にまで膨らみ、技術を強化するためのM&Aも検討する。2003年3月期に1兆円あった年金債務積立不足は今期中に解消できる見通しだ。

乗り切らなければ明日はない──FF温風器問題

 順風満帆だったわけではない。FF式石油温風器の不具合問題では社会的な非難を浴び、テレビCM約1万8200本について製品回収を呼び掛ける内容に差し替えたほか、1月末から今月にかけ、全世帯にはがきを出す異例の対策も実施する。今期の影響額は告知費用や回収費用など約240億円に上る。

 かき入れ時の年末商戦期に積極的なプロモーションを控えざるをえず、12月第1週の国内売り上げは前年比で12%減った。だが、第2週は4%増、翌週は18%増にまで回復した。決算発表の席上、川上専務が「多くの心配をマーケティング本部、販売会社、小売店に……」と言いかけ、言葉に詰まる場面もあった。

 川上専務は「これを乗り切らなくては明日の松下はない、と系列店をはげまし、社員を3万人動員するなどのパワーが通じたのでは」と話す一方、「数字は結果論。商品が良くなければ売れない」と危機を乗り越えてみせる商品力に自信を見せる。温風器問題は「何年かかるか分からないが、これで終わりということはなく、最後の1台までやる」という覚悟だ。

中村社長が改めて提示した7つの条件

photo 1月に中村社長が提示した7つの条件

 松下の好調ぶりはデジタル家電ブームという環境も要因の1つと認めつつ、「中村改革の本質は会社のDNAを変えたことだ。デジタルの波にキャッチアップできたのは中村改革のためだろう」(川上専務)。

 「会社のDNAを変える」ことがなぜ成功したのか。問われた川上専務は、1月10日に中村邦夫社長が社員に発した“21世紀に成功する製造業7つの条件”を紹介した。「マネシタ電器からの脱却」だという「差別化技術」や、「ITへの徹底した中村社長の思い」を表すという「ITの駆使」などに加え、「社会から信頼される社員とブランド」という条件もある。

 「これを改めて中村社長がこの時期に出したということ。これが答えになるのでは」(川上専務)

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