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掃除機とコンロで作る2足歩行ロボット(2/2 ページ)

» 2006年05月08日 13時29分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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女性型は「作りたくなかった」が……

 ロボ・ガレージ第1作は、自然に2足歩行できる「クロイノ」。米「TIME」誌の「最もクールな発明」に選ばれた。似たデザインの量産型がこの秋にも「マノイ」として一般発売される(関連記事参照)。このほど発表した第2作「FT」は初の女性型だ(関連記事参照)

画像 クロイノ

 実は以前から「女性型だけは作るまい」と決めていた。「女性型ロボットを作ってる自分が、はた目に気持ち悪くて」――マニアに好まれそうなロボットは、作りたくなかった。「かつらかぶってスカートはいてるから女性、とか、胸のところからミサイル飛び出すから女性だ、というのは嫌」

 ただ、女性らしい動きができる細いロボットを作るのは、技術的なチャレンジとして面白いと気づいた。「細いと部品が入らないし、ひょろ長くするとそれだけモーターの力が足りなくなり、バランスも悪くなる。さらには、女性らしい体型やしぐさは、研究テーマとしてじゅうぶんに奥が深いなと思いだして」

 ファッションモデルの動きを参考に、腰を振りながら動くロボット「FT」が完成。イロモノとして出したくなかったから、ロングヘアにはせず、わざと白黒にして無機質な感じにした。名前も「リカちゃん」のようなものは避け、あえて記号的にしたという。

画像 FT

ロボットは、助けてくれない

 ロボットが家庭に入る日が必ず来ると信じている。人間の代替ではなく、ロボットという新しい存在として。まるで、ホームステイの交換留学生のように。

 「ホームステイの交換留学生は、土足のまま家に入っていったりとか、訳の分からないことをするかもしれない。われわれが当たり前にできることができなくて『こいつアホちゃうか』と思ったりするかもしれない」

 「でも、われわれにできないことができる。4カ国語がしゃべれたり、視力がやたらと良かったり、ジャンプ力がすごかったり」

 ロボットも、まともに歩けなかったり、家事がうまくできなかったりと、人間なら当たり前にできることができないかもしれない。しかしそもそも、人間ができることをロボットにさせるという発想が間違っているという。

 「掃除や皿洗いなら人間がやっとけ、と。家事が面倒だからロボットにやってもらおうとか、そういう低級な発想から生まれるものではない。人間ができなくてロボットができることはたくさんある」

 ロボットは、何も助けてくれないけれど何かを変える――PCのようなものになるという。「パソコンが何か助けてくれるかというと、それは微妙。しょっちゅうフリーズもするし、そのせいで増えてる手間も多い気がする。だけどもう、なしではやっていけない」

 「交換留学生が家にやって来ても、助かることは何もないかもしれない。でも、留学生と一緒に暮らす生活も、きっと楽しいんじゃないかな」

感情移入できるロボットを

 「一家に1台欲しい」――マニアではない普通の人がそう思えるロボットを作りたいから、細かい性能ではなく、そのロボットで何を実現したいか、どんなデザインにするのか、イメージを最初に考える。「今までの鉄骨むき出し、無骨なロボットのままだと、家族と一緒に暮らせる家庭ロボットには、なりえない」

 ロボットの目がくりくりと大きいのは、感情移入してもらうための気配り。「目が小さいと、人間のミニチュアっぽい。同じ次元に存在しないものになり、話し掛けようという気にならなくなる」

 家庭に受け入れてもらうためのヒントは、動かないロボットや人形にあるという。例えば、人気の高級人形・スーパードルフィーは、それぞれの人形に細かい性格があり、服やかつらなども専門店で扱うなど、感情移入を誘う世界観が豊かだ。首しか動かないNECの「PaPeRo」は、会話のパターンがよく練られていて、感情移入しやすい。

 「よく動くロボットほど、『ワタシノナマエハ』とか、普段の会話でありえないことを言い出す。世界観を作るために周辺のネタを用意し、世界観の中にユーザーを浸らせてあげようというのがない」

 高橋さんのロボットは「人間が感情移入できるツボを全部押さえていきたい」という。「ツボの数は動かないものよりもさらに多いだろうけど、それを押さえていったら、完璧に普及するんじゃないかな」

ロボット実用化の時代へ

 科学万博のたびに、ロボットブームが盛り上がり、しぼんでいった。「万博があると『もうすぐロボットはあなたのそばに』みたいな誇大広告を打つ。みんなそれを信じるけど、実際に万博に行ってみたら大したことない、と思ったり、しばらくすると『ちっとも家にやってこない』となって、興味が薄れる。でも、そういうことを繰り返しながらもだんだん技術が上がってきている」

 愛知万博をきっかけに、ロボットは盛り上がっている。熱が冷める前に、本格実用化時代にこぎつけたいという。「今、あとちょっとのところ」

 ロボットが一家に1台。そんな未来がきっと来る。「そこに向けてのトレンドみたいなものを、自分の手で作り出したい」

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