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19人のIT戦士、島おこしに挑む(1/3 ページ)

» 2006年05月18日 08時15分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 これは、19人のIT戦士たちが、小さな離島で知恵と技術を結集し、島おこしプランを立案するまでの、36時間の物語である。

 5月12日、午後8時30分。東京の都心から離島に向かう客船のターミナル・竹芝桟橋。首都圏や関西、九州など各地から集結した16人のIT戦士が船の出航を待つ。20代の社会人を中心に、下は19歳の大学生から上は40代のSEまで、職種はネットワーク技術者やプログラマー、デザイナーなどさまざまだ。

 向かう先は、観光客誘致に悩む東京都・新島村の式根島。戦士たちは2日間かけて島民と交流し、島おこしにつながるITシステムを提案。島民の前で行うプレゼンテーションで、優秀なアイデアを競う。「島民に分かりやすい形」「観光客が飛びつきそうなアイデア」「専門家がみて納得するようなシステム構成」「予算は概算100万円程度」──などが条件だ。

 式根島は、伊豆七島の1つで、東京から南に約170キロに位置する周囲12キロ、人口590人の小さな島だ。美しいリアス式海岸と海の幸、天然温泉が自慢。主要産業は漁業と観光だが、観光客は減少の一途。漁業も高齢化に悩んでいる。

 観光客は1973〜74年ごろの年間6万5000人をピークに、現在は2万6000人程度。テコ入れを目指すが、これといった打開策も見あたらないのが現状だ。

画像 式根島(同島サイトより)

 これを聞きつけたマイクロソフトが、島に協力を申し出て企画したのが今回のイベント「式根島リゾートプロデュース」。公募などに応じたITプロたちがチームを組み、島おこしのアイデアを競う。同社の狙いは、ITによる地域振興と、IT技術者のイメージアップだ(関連記事参照)


 決戦に挑むのは学生チーム×2と社会人チーム×3の5チーム。学生チームは電気通信大学生4人の「電通的楽力クラブ」(チームカラー:赤)と、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス生4人の「SFC」(同青)。社会人チームは、女性のIT技術者4人の「Momo」(同ピンク)、男性IT技術者4人の「Yellow Deal」(同黄)。翌朝から、「週刊アスキー」編集部チーム(同緑)の3人が合流する。「あいつらには負けない」「絶対優勝する」――早くも闘志をのぞかせる。

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 下馬評の本命はYellow Deal。マイクロソフトのMVP(MS製品に関する高い技術を持つ人を表彰する制度)受賞者3人を擁するビジネスマンチームで、技術力・プレゼン力は群を抜く。対抗馬は、学生MVPが率いるSFC。マーケティングやブランディングなど、IT以外の分野を学ぶ学生も参加する。大穴はMomo。女性MVPをリーダーに、女性の視点で勝負する。

 午後9時30分。顔合わせを終えた戦士たちは、大型客船「かめりあ丸」に乗り込み、荒れた海にこぎ出す。プレゼンまで、残された時間はわずか35時間だ。

決戦の地へ

 船内で戦士たちは、島の自慢や課題をまとめたビデオを見、名産品や景勝地、観光の現状を学んで作戦を練る。「島民のITリテラシーはどの程度か」「島のネット環境は」「ITだけでは解決できない問題が多い」――頭を抱える戦士たち。海は荒れ、揺れる船内。船に酔っても眠る暇はない。PowerPointでプレゼン資料のベースを作り、明日の動き方を練る。

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画像 船上では、お笑い芸人「クールポコ」(上)「キッチン」によるライブが行われ、戦士たちの緊張をほぐす

 翌13日の午前9時。12時間の航海の後、式根島の港に入る。どんよりと重い空の下、歓迎の花束を抱えた式根の子どもたちの笑顔が、戦士の気持ちを晴れやかにする。村長や「ミス式根」も歓迎に駆けつけ、寝ずの船旅に疲れた戦士たちを奮い立たせる。

画像 子どもたちが花束で歓迎

 島民が用意した車に分乗し、島の中心部にある「式根島開発総合センター」(ITセンター)に向かう。1階のフロアに有線と無線LAN、作業机を設置した特設スペースが、この2日間の本拠地となる。

画像 式根島開発総合センター

 午前11時過ぎ。戦士たちは、式根島名物の岩海苔を詰め込んだ弁当をかきこみ、休息する間もなく取材に走る。タイムリミットは午後4時。雨足は強まるが、時間がない。

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