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“かしこいWeb”――Web2.0の先にあるもの(2/2 ページ)

» 2006年07月13日 13時31分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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Web2.0から“かしこいWeb”に

 Webの進化は、“かしこいWeb”――セマンティックWeb――の行き詰まりを打破する手段の1つになると大向さんは語る。

 今のWebはまだまだ“かしこく”ない。欲しい情報にたどり着こうと検索しても、何度も試して適切な検索ワードを見つけ出し、ずらりと並んだ検索結果から適切なものを探し出さねばならず、労力は大きい。検索エンジンの性能も高まってきているが、コンテンツも急増しており、情報にたどりつくまでの苦労はなかなか減らない。「Webで便利になったはずなのに、無駄なことをしているような気になってしまう」

 また、キーワードマッチングに適さない質問に対しては、検索エンジンは無力。「眞鍋かをりに次ぐ“ブログの女王”候補教えて」「最近何か面白いことない?」などといった質問に、今の検索エンジンは答えられない。

 こういった事態を見越し、インターネットの父・ティム・バーナーズリーが1998年から提唱していたのがセマンティックWebだ。セマンティックWebは、ネットの情報すべてにメタデータを加え、コンピュータが理解できる形にすることで、求める情報をすぐに探し出せる環境を目指している。

セマンティックWebと人

 セマンティックWebを実現するには、あらゆる言葉について、意味や概念の体系、他の言葉との関係などを定義づけ、コンピュータに分かる言語に翻訳した辞書を作る必要がある。だが“正しい”辞書が人間の手で作れるのかという問題もあり「バベルの塔を作ろうとしている、という批判もある」など、壁は高い。

画像 mixi日記をリアルタイムでUPし、コメントをつけてもらう、というデモも。1時間あまりの間に10以上のコメントが集まった

 この行き詰まりをコミュニティーにゆだねるのがWeb2.0の試みだと大向さんは語る。“Web2.0的”な技術やサービスをベースに今、人々が情報を少しずつ出し合い、協調しながら、知識を整理したり意味の体系を作る動きが活発化している。

 最も分かりやすい例は、ユーザー参加型辞書「Wikipedia」だろう。情報の信頼性に疑問符を付ける向きもあったが、英国の百科事典「ブリタニカ」と同等の信頼性があるというレポートもあり、実用性が実証されつつある。このほかにもユーザーによるタグ付けやソーシャルブックマークなど、CGMと呼ばれるようなユーザー参加コンテンツが、新しい知の体系を築きつつある。

 ネット上の個人のプロフィールや行動も、ある概念の定義づけに役立つ。例えば同じ「アップル」という言葉も、Macコミュニティーに属する人やMac好きな人の発言ならApple Computerを指し、園芸コミュニティーならりんごを指すことが多いと読み取れる。

 ユーザーが発信する情報や、ユーザーの行動に基づいた知の体系は「烏合の知」でしかなく、使い物にならないという指摘もある。確かに、ユーザー参加型辞書やソーシャルブックマークのタグ付けなどを見ても、誤った記述や表記の揺れ、個人の見方の違いによる矛盾などが見られ、全幅の信頼が置ける知の体系にはまだ遠い。

 だが「“使えない”では止まらず、どうリファインしていくかを考えたい」と大向さんは語り、技術的なアプローチや、集合知を活用した社会的なアプローチなどを模索していきたいとした。

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