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YouTubeで起きた悲しいできごとNews Weekly Access Top10(2006年7月23日-7月29日)

» 2006年07月31日 20時37分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 先週のアクセストップは、先々週の2位だった記事。お笑いコンビ「極楽とんぼ」の加藤浩次さんが、相方の山本圭一さんの不祥事に関してテレビ番組で謝罪したシーンの動画がYouTubeから削除された、という内容だ。

 山本さんの不祥事が報道された7月18日以来、関連する動画がYouTube上に次々に公開され、それぞれ数万〜数百万再生されていた。YouTubeのアクセスランキングでも常に上位。日本人だけでなく、米国人の興味もそそったようだ。

 だが日本語が分からない米国人にとって、加藤さんが泣きながら謝罪する映像や、萩本欽一さんが記者に囲まれている映像は、なぜ人気なのか疑問だったに違いない。一部の米国人が、各映像のコメント欄に「彼は誰?」「なぜ泣いているのだ」などと英語で書き込み、日本人ユーザーが英語で解説する、という“国際交流”も見られた。

 一方で、これらの映像をめぐって、一部の2ちゃんねらーが海外のYouTubeユーザーを誤解し、中傷していた、という騒動のてん末をまとめサイトで知った。

 経緯はこうだ。日本語を聞き取れない一部の外国人が、不祥事関連の映像のコメント欄に、「Jap」など差別表現を交えて「英語で話せ!」などと英語で書き込んでいた。これを見た米国の男性が「そんな差別表現はやめなさい」と英語で語る顔出しビデオを作成、YouTubeで公開した。

 しかし、英語を聞き取れない一部の2ちゃんねらーがビデオを見て「この米国人が、日本人をJapと中傷している」と勘違い。彼のビデオに中傷的なコメントを立て続けに書き込んでいった。

 この様子を見た、日本に留学中の米国人の女の子が「争いはやめてほしい」と語る日本語ビデオを作成してYouTubeに公開。だが彼女に彼氏がいると知った一部の2ちゃんねらーが嫉妬?し、彼女のビデオにも中傷を浴びせかけた。傷ついた彼女は、Web上アップしていた、日本での思い出を書いた日記や写真などを、非公開にしてしまった。

 当たり前のことだが、インターネットには国境がない。だからこそ、敵対し合っているイスラエルとレバノンの国民が、ブログを通じて話し合うこともできる。

 だが言語の壁は消えない。誤訳に基づいた勘違いは、時に悪意と連鎖して急速に広まる。テキストなら、翻訳サービスを利用すれば誤訳を避けられたかもしれない。だが音声は、手軽に翻訳する手段がない。誰かの“正しい”翻訳を待っている間に、誤解に基づく中傷はふくらむ。

 誤解が「ネタ」として面白ければ、事実を確認しようという冷静な視点よりも、誤解を広げる力のほうが強くなりがちだ。ネタを見つけた匿名の個人は、ただ面白がるためだけにネタを広げ、実名の個人を傷つける。

 2ちゃんねるの匿名性の負の側面が、YouTubeを通じて国境を越えた、悲しい事件だった。

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