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日本のテレビ局がYouTubeで番組配信、その狙いは

» 2006年08月24日 18時17分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 東京のUHF局・東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が8月末から、テレビで放送した番組を、YouTubeなど米国の3つの動画配信サイトに公開する。東京ローカルの同局だが、ネット公開で視聴エリアを世界に広げ、新たな視聴者層を獲得する狙いだ。

 YouTubeには、日本のテレビ番組が数多く公開されているが、ほとんどが権利者に無許諾でアップされた違法コンテンツとみられている。テレビ局自らが権利処理して公式に配信する例は日本では珍しく、YouTubeへの評価やネット配信に関する議論に一石を投じそうだ。

画像 BlogTVの1シーン

 配信するのは、毎週金曜日午後10時から生放送している30分間の情報番組「BlogTV」。人気ブロガーのインタビューや、ブログ関連の話題などを紹介する番組で、すでにYouTubeでリハーサルの様子などを公開しているが、番組本編も公開する。8月25日放送分から公開を始め、過去の放送分も順次公開していく計画だ。

 出演者や各回のゲスト、スポンサーにネット配信の許諾をもらうなどして権利処理し、CMを抜いた上で配信する。BlogTVの権利はMXと、スポンサーのデジタルガレージが保有しており、出演者も人気ブロガーやIT業界関係者、テクノラティのスタッフが中心で、許諾が取りやすいという。

画像 放送終了後に収録したコンテンツは、すでにYouTubeで公開中

 金曜日の放送終了後に、コーナーごとに分割してエンコードし、翌週月曜日ごろにはYouTubeとGoogle Video、「Revver」(動画に付けた広告からアフィリエイト収入を得られる米国の動画配信サイト)で公開する。3サービスを運営する事業者とは配信契約などは結んでおらず、個人と同じ立場で投稿する。

 国内の動画配信サービスからも、BlogTVのコンテンツを提供してほしいというオファーを受けているといい、供給先は積極的に拡大していく方針。動画ポッドキャストや携帯電話への配信も検討する。

放送エリアを超えて視聴者獲得を

画像 「TOKYO MXは、全テレビ局130局中129番目にできた新しい局で、ネットワークなどからのきつい縛りはない」(本間編成局長)

 MXテレビの視聴可能エリアは東京圏の850万世帯だが、YouTubeなどを活用することで、世界中の何千万ものユーザーにアクセスできる。同社の本間雅之編成局長は「YouTubeやGoogle Videoを使うことで、視聴者を多方面に開拓したい」と狙いを語る。当面は視聴者拡大のために活用していく考えで、配信を利用した新ビジネスなどはまだ考えていないという。

 配信動画に寄せられるネットユーザーのコメントを、番組作りにも生かす考え。著作権管理にはクリエイティブ・コモンズのライセンスを活用し、原著作者のクレジットを表記すれば再配信や改変を可能にする予定だ。BlogTVの英語字幕版などをユーザーが自主的に作ってくれる、といったことを期待している。

 BlogTV以外の番組のYouTubeなどへの配信は、今のところ考えていないという。「タレントのネット配信への理解は進んできているが、楽曲の利用が難しい」(本間編成局長)ことが理由の1つ。楽曲配信には著作権料を改めて支払う必要があり、コスト負担が大きすぎるという。

著作権侵害対策は

 YouTubeには、テレビ局の著作権を侵害したコンテンツが多く掲載されているため、キー局はYouTubeを監視し、違法コンテンツの削除要請を頻繁に行っている(関連記事参照)

 MXテレビの番組も、YouTubeに無断でアップされることがある。最近では立川談志さんが、亀田興毅さんのタイトルマッチに関して語る動画が無断で公開され、人気となった。

 この動画については「抗議すべきか立川さんに確認したところ、『いい』と言われたので、特例としてそのままにしてある」(本間編成局長)というが、「著作権侵害は問題。問題のあるアップロードにはクレームを付けていく」(本間編成局長)。YouTubeの活用を図るMXテレビだが、ユーザーによる違法行為を容認しているわけではないことを強調している。

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