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公共交通事業者が、地域社会の安心のために何かできないか――PiTaPaグーパスに聞く Interview(3/3 ページ)

» 2006年08月31日 22時31分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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公共交通事業者として「何かできないか」

 スルッとKANSAIがあんしんグーパスを導入した背景には、関西で起きた複数の、そして痛ましい児童殺傷事件がある。

 「セキュリティビジネスのニーズが高まるとかそういう事ではなく、(児童が被害に遭うという)嫌な事件が頻発する世の中に、我々の立場として何かできないか。社会の安心・安全に少しでも貢献したいという気持ちから、あんしんグーパスのプロジェクトを立ち上げました。公共交通事業者は安全に社会的使命を負っていると認識しています。その第一は輸送の安全ですが、その先には社会や地域の安全があり、お客様に様々な形で安心感を提供したい。ですから、利用料金もできるだけ下げたかった。少ないご負担で多くの人に使っていただき、その上で現状の課題になっている部分は1つずつクリアーしたいと考えています」(河野氏)

 クルマの運転免許を持たない子供達にとって、公共交通は唯一のモビリティである。その中で提供される安価で手頃なセキュリティサービスは、地域や社会の安全、保護者の安心に大きく貢献するだろう。たとえ初期の段階から完璧なセキュリティサービスになっていなくても、スルッとKANSAIとPiTaPaグーパスが「安全・安心のために何かやりたい」と始めたあんしんグーパスには、大きな社会的意義があると筆者は思う。

 関東には、JR東日本の「Suica」があり、今年度内には私鉄・地下鉄各線の「PASMO」も始まる。これら公共交通の利用者の中には多くの子どもたちがおり、電車を乗り継いで通学や通塾をしている。あんしんグーパスのような公共交通連携のセキュリティサービスが安価に提供されれば、使いたいと思う保護者は多いのではないだろうか。

 ビジネスとしての可能性はもちろん重要だ。だが、その前に、公共交通事業者のスタンスとして、利用者や地域社会の安全・安心にFeliCaのような新しいテクノロジーを使って貢献する。そのような気運が、首都圏をはじめ全国的に広がることに強く期待したい。

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