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「10年前から予見していた」 Web2.0を顧客拡大の新手法にWeb2.0と金融の接点――SBI北尾社長に聞く(前編)(2/2 ページ)

» 2007年01月18日 14時36分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 広告も、追及していけばGoogleみたいにもうけられるところもあるかもしれないが、競争が激しくなってきていて、それだけで収益を上げていくのは難しい。Googleも今は広告でうまくいっているが、将来的にどうなるかはまったく分からない。mixiは今でも大してもうかってないでしょう? 結構なバリュー(株価)は付いたけど。

 広告は今後、本当に分からなくなると思う。広告主は、広告効果をより厳密にチェックするようになっている。以前のように「何でもいいからヤフーに広告を出しとく」ではなく、ターゲットの領域を決めてそこに広告を出す、という世界になってきている。

 ヤフーも、広告だけ見るとたいして伸びてない。ヤフーはもともとは広告モデルだけで出発したが、オークションやソフトバンクBB、ショッピングと、ビジネスラインをどんどん増やして今の高収益を維持している。mixiは、事業をどう発展できるかというビジョンがないから大したことはない。

 ぼくはそういうビジネスをやらない。ぼくのビジネスには金融という世界がまずあり、金融業としてのフィーをちゃんといただく。もちろん、広告収入を得られる部分は広告も利用すればいいと思うが、金融業でちゃんとカネを稼いでいくのが大事だ。

――SBIは、Web2.0でどうもうけるのか。

 Web2.0の代表と言われるブログやSNS、RSSそれ自体でもうける、というわけではない。当社は、お客さんの数を効率的に増やすためにこういう手法を導入する。

 初めの収益は犠牲にしていいから「まず量を集める」というのが、金融に限らずあらゆる商売の鉄則だ。ヘーゲル哲学で「量質転化の法則」というのがある。お客さんの量が増えれば、多様なお客さんのニーズに合わせていろいろな商品を作る。つまり、量が拡大した結果として質の改善が要求される。質を改善すると、それがまた量の蓄積につながる。量の蓄積が質を規定するというものだ。

 Web2.0もお客さんを増やす方法の1つだ。例えば、イー・トレード証券のお客さん同士で相場観を語り合ったりするような場を設けるといったことが考えられる。それが口コミで広がり、さらにいろんな人が入ってくれば、結果としてイー・トレードのお客さんの数が増え、サービスへの愛着につながる。こういった試みは、イー・トレードのお客さんの数がコミュニティーを形成するに十分なところまで到達して、初めて意味がある。

 仮にわれわれが金融ポータルやSNS、ブログを作るとすれば、すべて金融のビジネスにつなげて、ちゃんと採算を取っていく。今も例えば、SBIのいろんなブログからイー・トレードにつながるリンクを張らせたり、いろいろしている。厳密にそれがどれの程度貢献している数量化はしていないが、お客集めに貢献すればいい、という考えだ。

 初心者向けに「イー・トレード エレメンタリー」というサイトも作ろうとしている。ブログだけではなく、セミナーを開いて情報交換するなど、リアルとネットで複合的にやっていく。そういった企画は、各事業分野でスタートしている。

新入社員にWeb進化論を読ませた狙い

画像 Web進化論の感想を掲載した冊子

 新入社員に定期的に作文課題を与え、ぼくがすべて採点し、1位の社員に5万円を渡す取り組みを続けている。優秀者の文章は冊子に載せ、社内で配っている。Web進化論の感想文もその課題の1つだった。

 インターネット第1世代は、ネットを既存の社会の中にそのまま入れただけ、「写像」だった。それに対して、今の若い人はネットの世界にどっぷりつかっていて、世の中の風というのをよく分かっている。それを吸収するのがぼくの最大の狙い。古い人は若い人から学ばなくてはいけないから、これを冊子にして古い人に読ませ、勉強させる。

 新入社員から学ぼうという発想を明確に打ち出し、ここまでしているのは、一部上場企業ではぼくぐらいしかいないと思う。新入社員の勉強にもなるし、ぼくもずいぶん勉強させてもらっている。

 今後は若い人をどんどん入れていく。今のネット企業は即戦力重視だから、新入社員を入っているところは少ないと思う。うちもこの間まで銀行や証券に勤めていた人を中途で採っていたが、それでは不十分だ。

(「Web2.0と金融の接点――SBI北尾社長に聞く(後編)」に続く)

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