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「思ったより友好的に話せた」――YouTubeトップと国内著作権者が初会談

» 2007年02月06日 22時05分 公開
[岡田有花,ITmedia]
photo 「実際に顔を合わせることができ、大きな一歩を踏み出せた」と菅原理事

 YouTubeの経営者らが2月6日来日し、国内権利者団体など23の事業者・団体の代表と初会談した。「最初は殴り合いになるかと思ったが、お互い前を向いて話ができた」――会談した日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原瑞夫常任理事はこう話し、会談の成果を強調した。

 ただ、23団体が著作権侵害防止に向けてYouTubeに要求してきた項目については、一部を除いて具体策が示されなかった。「会談の中身は満足できるものではなかった。今後YouTubeが示す具体策に期待したい」(菅原理事)

 来日したのは、YouTubeのチャド・ハーリー最高経営責任者(CEO)とスティーブ・チェン最高技術責任者(CTO)、Googleのデイビット・ユン副社長(コンテンツ提携担当)。それぞれ初来日だったといい、日本の権利団体代表者ら7人と、同日午後2時から2時間にわたって会談した。

photo 日本側の参加者

 日本側は、菅原氏と、日本映画制作者連盟の華頂尚隆事務局次長、日本映像ソフト協会の酒井信義管理部部長代理、NHKライツ・アーカイブセンターの石井亮平著作権・契約部長、日本民間放送連盟の植井理行IPR専門部会委員、日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センターの松武秀樹運営委員、同・山崎博司広報委員の7人で、同日午後6時から会見し、会談の内容について説明した。

 「紳士的な対応をしてくれた、と認識している。YouTubeも著作権を重視しており、Googleの協力を得て著作権侵害を防止する技術を開発するなど、問題解決に向けて努力すると言っていた」――植井氏は、YouTube側の対応をこう評価する。

 ほかの参加者も「日本の著作権侵害の現状を真しに受け止めてもらっている」(華頂氏)、「誠意がある対応だった」(酒井氏)、「理解し合えた」(石井氏)、「友好的に話ができた」(山崎氏)、「米国には著作隣接権がないため説明したが、理解してもらえた」(松武氏)などと評価した。

内容は「100%は満足していない」

photo YMOサウンドプログラマーの松武氏。「放送を始めたばかりのYMOのCMも、YouTubeに上がっていた」

 ただ「会談内容については100%は満足していない」(植井氏)としている。23団体がYouTubeに対し要求してきた、(1)著作権に関する注意書きの日本語化、(2)動画をアップロードするユーザーの住所・氏名の登録、(3)著作権侵害映像を過去にアップロードしたことがあるユーザーのアカウント削除――については、(1)のみ「早急に対応する」という確約を得、「1カ月かからないうちに対応してくれる、という雰囲気だった」(菅原理事)が、それ以外は具体策が示されなかったためだ。

 (2)については「彼らとしてもいろいろと検討しているが、YouTubeには非営利の動画も多数アップされており、ユーザー全員に対して住所・氏名の登録を求めるのは難しい」(菅原理事という答えだったという。

 (3)については「今の態勢でも、規約違反動画を3回アップしたユーザーはアクセスを停止し、全データを削除している」との説明を受けた。また、一度違法と判断された動画と同じ長さ・内容のコンテンツは、自動的に見つけ出して削除できる仕組みもあるという。

 YouTube側は今後、Googleの協力も得て、違法とおぼしき動画を素早く見つけ出すシステムの開発を行っていく、などと話したというが、対策の具体化はこれから。権利者側は「技術開発には時間がかかるだろう」(植井氏)と理解を示しており、当面は、権利者が違法コンテンツを見つけ出してYouTubeに通報して削除してもらう――というこれまでのフローが続きそうだ。

「YouTube自体が悪いわけではない」

 YouTube側から「YouTubeと、動画をアップロードしたユーザーとで広告収益を配分したい」というビジネスの提案もあったというが、権利者側は「違法コンテンツを前提にしたビジネスの話はあり得ない」(菅原氏)とし、まずは違法動画の撲滅を求めていく。今後は、Google日本法人などを通じて協議を続けていくが、YouTube幹部と次に対面協議する日程などは決まっていないという。

 「YouTube自体が悪いと言っているわけではない」。複数の権利者団体代表者から、こんな意見も出た。「YouTubeで違法コンテンツが上がっているのは問題だが、今後も注目せねばならないと思っている」(石井氏)。「YouTubeから違法動画がなくなれば、各コンテンツホルダーが、適法な利用を提供することもあるだろう」(菅原氏)

 複数の記者から「動画コンテンツのネット配信が進んでいないため、YouTubeのようなサービスの人気が高まるのでは。合法的な動画配信をもっと積極化するべき」といった意見も出、権利者側が「合法配信も進めていきたい」(石井氏)、「権利処理が難しいが、今後より簡便にしていきたい」(菅原氏)などと答える一幕もあった。

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