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Second Life“不”人気、7つの理由(3/3 ページ)

» 2007年03月07日 17時46分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 ここ最近「Web2.0」などと言われ、新しいネットサービスの形としてブログやSNS、YouTubeなどが注目されてきた。これらのブームが沈静化し、「次に来るサービスは何だ」とみんなが考え始めたとき、ちょうどいいタイミングでやってきたのがSecond Lifeだったのだろう。

 Second Lifeは「ユーザーが世界を作る」「作成したアイテムの著作権はユーザーに帰属する」など“Web2.0”的な要素もふんだんに備えている。その上「3次元」「RMT」(リアルマネートレード)といった次世代を感じさせる要素を持ち合わせていたこともあり、先端的なブロガーなどが絶賛。メディアもこれに飛びつき、広がった──という面がある。「ぼくも当然知っている。新しい可能性を感じさせるね(やったことないけど)」

 参入を急ぐ企業側の論理はどうか。大企業にとってSecond Lifeへの参入コストは極めて低い。SIMは約20万円でまるごと1つ購入でき、維持費は月額数万円。建物の構築などをすべて外注したとしても、かかる経費はせいぜい数百万円程度で、大手サイトに1カ月バナー広告を出稿するより低コストだ。

 Second Lifeはユーザー数が少ないため、広告効果は極めて限定的だ。しかし今のうちに参入を表明すればマスコミが紹介してくれる可能性が高い。メディアに露出できる上、先進的な企業としてのイメージも付けられるオイシイ広告媒体、という訳だ。

それでもSecond Lifeにハマる人

 とはいえ、Second Lifeが新しい可能性を持った空間であることは確かだ。誰でも自由にオブジェクトを作れ、他人に販売したり、自由にビジネス展開できたりする点や、海外のユーザーと気軽に知り合える点などに魅力を感じ、“中毒”と言えるほどハマるユーザーもいる。

画像 自作のTシャツを着たmina junさん。「tokyo girls」というクリエイターコミュニティーを主宰し、上野(Ueno)に「TOKYO ART」という名のギャラリーカフェを作ったという。「まだオープン前ですがぜひ見に来て下さい」

 昨年12月からSecond Lifeを始め、その世界にハマったという、美術大学出身のクリエイター職の女性(32)は、mina junのアバター名で、オリジナルTシャツを作ったりと活発に活動中。始めた当初は操作方法も良くわからなかったが、この世界に魅了され、試行錯誤しながら操作を学んでいったという。

 「最初はオブジェクトの取り外し方も座り方も分からず、右手にトーチ、頭にバニー、腰に重いベルトなど“全部盛り”で歩き回っていましたが、『Second Life Wiki』などで調べたり、人に聞きながら少しずつ解決しました。世界があまりにキャッチーだったので、分からないながらもついつい進んでしまいました」

 Second Lifeの魅力は、見知らぬ人とコミュニケーションを楽しめることと、自由に物が作れることだという。「Tシャツやインテリアなどをリアルに再現できるので、シミュレーションとしても素晴らしい世界だと思います」。テクスチャーをアップするにもお金がかかるなど、物を作るのも無料ではないが、この仕組みをminaさんは評価する。

 「確かにテクスチャー1枚アップするのにもお金が請求されますが、個人的には程よい緊張感があっていいと思います。デジカメが生まれる前の、フィルムで写真撮ってたときのシャッター押す瞬間みたいな気持ちでしょうか。5円や10円をみんなは自己表現のために支払い、そのお金でSecond Lifeの運営が充実するというのはとても健全だと思います」

 物を作らなくても、さまざまな楽しみ方があるという。「好きなインテリアや乗り物をコレクションしたり、知らない場所に探検に行ったり、知らない人が突然ツアーガイドになってくれてそのまま3時間付いて回ることになったり、ニュービジネスを考えたり。楽しみ方はいろいろあります。私の周りには、難しいスクリプトを驚くような仕組みに変換することを研究している人や、世界のコミュニケーション自体をSecond Lifeで変えようと研究している人などがいて、みんな利害関係やお金は関係なく、本当に楽しんでいます」

 初心者がSecond Lifeを楽しむコツも聞いてみた。「最初は日本語の使える日本人居住区に行くのがおすすめ。みなさんとても親切に教えてくれます。ちょっと慣れてきたらフリーアイテムがたくさんもらえるバザーなどに行き、アバターをカスタマイズしたりするとどんどんハマって抜け出せなせなくなり、家買っちゃうと思います」

Second Lifeを盛り上げるには

 Second Lifeは確かに、さまざまな可能性を持った新しい空間だ。それだけにそろそろ“空騒ぎ”をやめて日本人のユーザーコミュニティーを育て、Second Lifeの世界全体を盛り上げていかないと、メディアや企業からの過度な期待に押しつぶされ、広告に埋もれてコミュニティーも壊れてしまうのではと、記者は危ぐしている。

画像 paperboy&co.がSecond Lifeに構築したバーチャルオフィス

 一般の日本人にも使いやすくし、草の根からコミュニティーを盛り上げるためには、クライアントの日本語化、インタフェースの簡略化、日本語ガイダンスの充実、日本語サービスの強化など、クリアすべき課題は多い。ただ昨年12月時点で日本専任スタッフが1人しかいなかったLinden Labにすべて期待するのは難しく、日本語クライアントが公開されたとしても、急速な流行にはつながりにくいだろう。

 企業がSecond Life内のコミュニティーを支援しようという動きも徐々に出てきている。paperboy&co.は、Second Life内でビジネスとデザインのコンテストを展開。Second Lifeにハマっているという同社の家入一真社長は「面白い個人がたくさん入ってこなきゃ日本でも流行る訳がない」とブログに書いている。前出のminaさんも「Second Lifeで企業が何かをするなら、一番の財産である『ものを作ろうとしている人』たちを応援すべきじゃないかな。そうしないとクリエイティビティゼロの、ただの看板ランドになってしまいます」と、クリエイター支援の必要性を語る。

 Second Lifeはまだ黎明期。過剰な期待を寄せてこぞって報道したり、企業広告で埋め尽くす前に、世界を面白くしてくれるクリエイターを育て、コミュニティーを健全に成長させることが先決だろう。

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