富士フイルムは7月24日、自社開発したソフトウェア技術を外部公開するラボサイト「FUJIFILM Internet Technology Labs」を開設し、第1弾として画像検索エンジン「TRIPIT」(トリピット)を公開した。APIも無償公開し、同エンジンを活用してアプリケーションを開発できる。
国内大手メーカーが、自社開発したWebサービスのAPIなどをオープンな形で公開するのは珍しい。同社は「1社でニーズを見つけてビジネス化するのは難しい時代。作った技術を広く公開して使ってもらい、活用法や要望などのフィードバックをもらえれば」としている。
TRIPITは、画像に付けたキーワードタグなど、言葉を活用して検索を行うエンジンだ。例えば「花」というタグが付いた画像をキーにして検索を始めると、「花」に対して上位の意味を持つ「植物」、下位になる「チューリップ」「あじさい」、並列の意味を持つ「ガーデニング」「鳥」──などのタグが付いた画像を検索結果として表示。「『これ』といえば『あれ』」という連想的な検索をできるようにする。
TRIPITサイトでは、写真共有サイトFlickrの画像を検索できるデモアプリケーションを公開した。1枚の画像をきっかけに、連想が連なっていくように画像を次々と閲覧できる直感的なインタフェースも構築している。
TRIPITのコアになっているのは、言葉同士の関連をデータベース化したシソーラス辞書。このため画像に限らず、タグやキーワードなどを付加できるコンテンツであれば検索対象として扱える。サイトでは、Wikipedia日本語版の記事を連想的にたどれるデモアプリケーションも公開している。
シソーラス辞書は、言語処理技術に強いサーバードメインと共同開発した。文章中の言葉と言葉のつながりを抽出してデータベース化し、言葉同士の関連性の重み付けなどに独自の計算方法を活用して体系化している。
現在は数十万語の語彙を収録しているが、自動で辞書を拡張する学習エンジンも組み込んだ。言葉同士の関連性の数値化では、Wikipediaの記事上のキーワードの関連をスコアリングに応用しているという。
無償公開したAPIは、TRPITのシソーラス機能を呼び出すためのもの。APIを使い、キーワードをパラメータ指定して渡すと、そのキーワードに関連する言葉をシソーラスの中から検索し、XML形式で返す。例えば動画や音楽など、メタデータが付加されたコンテンツを検索するアプリケーション開発などに応用できる。
ネット企業ではAPIの公開は一般的だが、他社に真似のできない独自技術の開発にしのぎを削ってきた大手メーカーにはこうしたカルチャーは理解されにくく、独自技術をAPI公開などの形でオープンにしているケースはあまりない。
画像全般に強みを持つ富士フイルムは、デジタル画像処理ソフト「Image Intelligence」を開発するなど、ソフトウェア技術も蓄積してきた。新設したラボサイトは、商用化の前段階の新技術をいち早く外部に公開し、多くの開発者に実際に使ってもらうことで、新技術の将来性の検証やブラッシュアップにつなげたい考えだ。
将来は新技術を活用したビジネス展開も目指していくが、「まずは使ってもらうこと」として広く開発者に活用を呼び掛けていく。
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