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モバイル検索広告をめぐりGoogle対MSの戦いが過熱

» 2007年09月13日 15時55分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 活況のモバイル検索広告市場は向こう5年間年率112%で拡大を続け、市場リーダーである米Googleにとっては、同市場での地盤強化に必死なMicrosoftに対抗するための自衛策が急務となるだろう――。米The Kelsey Groupのアナリストがそう指摘している。

 アナリストのマット・ブース氏によると、モバイル検索広告の売上高は今年の3320万ドルから2012年には14億ドルに拡大すると見られているが、従来の検索エンジンの成長が鈍化しているのもその理由の1つという。

 同氏によると、従来からの主要な収入源の成長が鈍化するなか、Google、Microsoft、Yahoo!の各社は自らの市場価値を維持するためにもモバイル広告市場に攻め入る必要に迫られる。

 さらにブース氏によると、Googleには10億ドルから20億ドル程度の広告収益のだぶつきがあるという。つまり、広告主は今よりトラフィックが増えれば、Googleに対して、もっと広告料を支払う気があるということだ。Googleはそうした広告料をすべてすくい取るための場として、モバイル市場に期待を寄せているようだ。同社は700MHz無線周波数帯の競売に46億ドルの最低入札価格で参加する意向を表明しているほか、Googleフォンのうわさも長い間ささやかれている。

 「Googleが携帯端末を介して、さらに大量のトラフィックを手に入れることになり、有料のリンクでも導入することになれば、同社は突如として、“簡単にお金を生み出せるプラットフォーム”を有することになり、広告収益のだぶつきもある程度解消できてしまうだろう」とブース氏。

 Google幹部からのコメントは得られなかったが、こうした成長の可能性はGoogleに自衛のためのより強いプレッシャーを与えることになるだろう。Googleは、このインターネット広告の新しい開拓地からできる限り多くの利益を上げようとしているMicrosoftなどの競合各社から、自社の領域を守らなければならない。

 ブース氏によると、Microsoftはおそらく、検索市場でGoogleに追い付くために、モバイル分野で「側面から固める戦略」を取る見込みという。

 考えられるのは、VoIP業者のTellme Networksの買収により獲得した資産をMSN製品・サービスと統合したり、AT&TやVerizonなどの企業との提携を強化したりといった動きだ。

 Microsoftはまた、携帯電話と携帯端末向けにテキスト広告とディスプレイ広告の提供を手掛けるScreenTonicを買収しており、これを自社プラットフォームの中心的要素に据えることになるかもしれない。

 Microsoftは将来の計画について詳細を述べることを断っているが、広報担当のホイットニー・バーク氏はeWEEKに対し、次のように語っている。「われわれは、向こう数カ月から数年間にわたり、モバイル広告が戦略的な市場機会になるものと確信している。そこでわれわれは、この分野への投資拡大に取り組んでいる」

 またバーク氏によると、Microsoftは現在ScreenTonicを介して200社以上のモバイル広告主の広告を扱っており、これまでに既に15億以上のモバイル広告インプレッションを販売したという。

 「Microsoftがモバイル市場で大きなシェアを確保することになれば、検索市場での地盤も徐々に強化できるだろう。欧州ではGoogleの検索シェアが拡大しており、モバイル市場でのシェアも同様に拡大している」とアナリストのブース氏は指摘している。

 だが、うかうかしていられないのはYahoo!も同じだ。同社は早くも2004年に、モバイル検索広告事業に着手している。

 「Yahoo! JapanとMSN Japanを通じて、日本で初めてスポンサー付きのモバイル検索を提供したのはYahoo!だ」と同社のモバイル事業担当ジェネラルマネジャー、マイケル・ベール氏はeWEEKに語っている。

 「日本ではMSNのモバイル収入はすべてYahoo!からのものだ」と同氏。2005年には、Yahoo!は英Orangeと提携し、英国市場でもスポンサー付き検索の提供を開始している。

 そしてYahoo!はようやく昨秋、モバイル検索エンジンoneSearchで有料リスティングを米国に導入した。同社は現在、モバイル検索広告の提供国の拡大を計画している。またベール氏によると、Yahoo!は新しい検索プラットフォームPanamaについてもモバイル広告に対応させる計画という。

 ベール氏はモバイル広告インプレッションのデータの公表は断っているが、ScreenTonicを介したMicrosoftのモバイル広告インプレッションの売り上げが15億ドルだと知らされると、Yahoo!の売り上げは「それよりもはるかに高い」と語った。

 モバイル検索広告に関しては、打倒すべきベンダーはYahoo!だと言う人もいるかもしれない。

モバイル検索広告をどのように提供するか?

 ブース氏によれば、ベンダーは3種類のモバイル検索広告から売り上げを期待できる。

 1つは、「検索&表示」式のモバイルインターネット広告だ。この場合、SMS(Short Message Service)やWAP(Wireless Application Protocol)などの技術を使って、インターネットで情報を検索するコンシューマーに対し、オンライン広告が表示される。

 ブース氏は、AppleのiPhoneがオンライン広告の既成の枠を取り払うことになると予想している。例えば、iPhoneでGoogle Mapsを閲覧中に表示された広告をユーザーがクリックした場合には、広告主には、それがインプレッションとしてカウントされるといった具合だ。

 モバイル検索の2つ目のタイプは、Googleの1-800-GOOG411やMicrosoftのTellme、Jingle Networksなどのような広告スポンサー付きの無料の電話番号案内だ。携帯電話で無料の電話番号案内にダイヤルすると、探している情報とともに宣伝が表示されることになる。

 3つ目は、マルチモードのアプリケーションを使ったものだ。モバイル端末にソフトウェアプログラムをダウンロードしておけば、電話に話し掛けるだけで、検索結果などがテキストとして返信されるというもの。今のところ、MicrosoftのTellmeやV-Enableがこうしたサービスを提供している。

 「携帯キャリアや既存の電話番号案内業者の多くは、地図や案内など複数の機能を備えたバイキング形式のプラットフォームへと移行することになるのではないだろうか。自分たちの市場をインターネット企業や広告スポンサー付きの電話番号案内にみすみす奪われるようなことはしないだろう」とブース氏。

 同氏によると、マルチモードは重要な分野だという。なぜなら、マルチモードアプリケーションの大半は自動化されているため、そうしたアプリケーションを使えば、キャリア各社は電話番号案内ビジネスで現在享受している90%の利益幅を今後も維持できるからだ。

 「経済的な側面で非常に魅力がある」とブース氏。

 さらに同氏は、デバイスとデータプランがそろえば、モバイルインターネットユーザー数は現在の3790万から2012年には9170万に拡大すると予想している。

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