中国政府の「サイバー万里の長城」は、実際はファイアウォールではなく、国民に自己を監視させる「パノプティコン」だった――カリフォルニア大学とニューメキシコ大学の研究者がこのような調査結果を明らかにした。
パノプティコンとは、英国の法学者ジェレミー・ベンサムが18世紀に考案した放射状監獄。囚人が「いつ監視されているか分からない」という状況を作り出すことで、囚人に自分自身を監視させる。両校の研究者らは、中国のインターネット検閲システムもこれと同様だとしている。
インターネット検閲を行っている国家のほとんどは特定のWebサイトを遮断するシステムに頼っているが、中国の場合は特定のキーワードを含むWebコンテンツをフィルタリングしている。このフィルタリングは時に機能しないこともあり、これが国民に「いつ見られているか分からない」という意識を持たせて、自己検閲を促しているのだろうと研究者らは述べている。
研究者らは、法輪功や天安門事件に関する言葉など、検閲の対象になりそうなさまざまな言葉を含むメッセージを中国内のインターネットアドレスに送ってみた。ファイアウォールが設置されていれば、禁止されている言葉を含むメッセージがすべて遮断されるはずだが、テストしたルートのうち約28%でメッセージがルータを通過して目的のアドレスに着いた。特にインターネットの利用が多いときに、フィルタリングのエラーが起きたという。
研究者らは、中国のインターネット検閲の変化を天気予報のように伝える「ConceptDoppler」というツールを開発しているところだ。このツールは数学的な手法で言葉を意味によってクラスタ化して、ブラックリストに載りそうな語を特定する。
この研究成果は10月29日〜11月2日にバージニア州アレクサンドリアで開催のAssociation for Computing Machinery Computer and Communications Security Conferenceで披露される。
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