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ミャンマー人権侵害の「証拠」――衛星写真を公開

» 2007年10月01日 10時40分 公開
[ITmedia]

 集落の破壊、強制移住――米国科学振興協会(AAAS)がミャンマーで起きている人権侵害について、「証拠」となる衛星写真とともに報告した。

 ミャンマーの人権侵害に関する調査報告が衛星写真の分析付きで公開されるのはこれが初めてという。AAASはこれまでにも、ダルフールやジンバブエの紛争に関し、衛星写真を使って同様の調査を行ってきた。

 ミャンマーは1962年以来、軍事政権が続いており、民主化活動家アウン・サン・スーチー氏の軟禁をはじめ、政治犯の投獄や少年兵の強制徴収などの人権侵害が行われているとして各国から批判されている。

 AAASの地球空間技術および人権プロジェクトディレクター、ラーズ・ブロムレー氏はミャンマーの人権団体と協力して、2006年半ばから2007年初めにかけてミャンマー東部のカレン州およびその周辺で報告された70件以上の人権侵害を報告書にまとめた。同氏はこの地域の衛星観測について、植物の生育が早いため、集落などを焼いた痕跡がすぐに覆われてしまったり、雲や地形の関係で衛星観測が遮断されることが多かったと説明している。また地図が古いため、集落の名前が地域の人々の呼び名と一致しないなどの問題もあったという。

 そうした課題があったものの、70件の人権侵害報告のうち31件の正確な位置を特定でき、衛星写真による分析で31件中25件について物理的な証拠が得られたと同氏は報告している。18カ所の村落の破壊あるいは損害の証拠が得られ、焼け跡、軍事拠点の拡張、また強制移住とおぼしきものも見られたという。

AAASが公開した写真。上は2004年5月、下は2007年2月のもの。建物がすべて撤去されている。

 AAASは、9月末に発生した軍事政権への反対運動を受け、都市部の新しい画像を集める衛星を配備した。ミャンマーでは電話回線とインターネットサービスが停止されているため、「このような画像は都市部での軍配備のレベルを理解する数少ない方法の1つになるだろう」と同氏は述べている。

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