国立情報学研究所(NII)はこのほど、1981年から25年間に発生した台風の衛星画像を網羅したデータベースを「デジタル台風」で公開した。台風について記したブログの情報を、実際の台風の動きと合わせて表示するシステムも公開し、ブロガーに協力を呼び掛けている。
「宇宙からの視線」である衛星画像と、ブログという「地上の視線」の両面から台風を詳しく知ることができる。「災害時に大量に流れ込んでくる情報を、リアルタイムにどう見せていくか」という課題への取り組みにもなっている。
データベースは、気象衛星「ひまわり」が撮影した約13万件の画像を収録した。ひまわりが撮影した地球の全周画像から台風部分を切り出した上で、台風と画像の中心を一致させ、面積が一定となるように変換して収録。画像の類似度で検索するといったユニークな方法も取り入れた。iPodで台風の動きを見られるデータもダウンロード可能だ。
台風の公開型データベースとしては世界有数の規模。誰でも無料で検索・閲覧できるほか、大量の画像を活用した台風研究にもいかしていく。
例えば、台風の気圧は実は実測に基づいてはおらず、衛星画像の形状を人間が見て判断する「ドボラック法」で推定されている。担当した北本朝展助教授は「コンピュータが計算で行うような方向を作りたいが、そのためには多くの画像の解析が必要で、そのために大量のデータを集めた」とねらいを話す。
データベースと同時公開したのは、台風の動きとブログの情報を関連づけて表示できる「台風前線」。台風に関するブログのトラックバックを集めている「台風への眼」の情報を、台風の動きのアニメーションとともに地図上で表示できるようにした。台風の動きと、ブロガーが発信する情報との時間的・空間的な関連性が一目で分かるようにした。台風シーズンに向け、ブロガーに広く参加を呼び掛けている。
NIIの東倉洋一副所長は「異分野・異メディアでいろんな情報が無限にあるが、そこには技術的な壁もある。台風を似たもの画像から検索する仕組みは台風を形から見るということだが、気象学者はおそらくそういうことはしないだろう。壁を突破するいい試みになるのでは」と話している。
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