米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が、温度や湿度、塩分濃度、圧力などさまざまな刺激に応じて急速に色を変える構造化ゲルを開発した。
構造化ゲルは、内部に層などのパターンを持つ。MITが開発したゲルは、特定の刺激に応じて伸び縮みする素材を重要なコンポーネントに使っている。この素材の伸縮によってゲルの厚みが変わり、ゲルが反射させる可視光の波長が変わるため、色が変化するという。
このゲルは、ポリスチレンとポリ-2-ビニルピリジン(2VP)の層を交互に重ねた自己組織化型ブロックコポリマー薄膜を使っている。これらの層の厚さと屈折率によって、ゲルがどの色の光を反射するかが決まる。ポリスチレン層の厚さを一定に保ち、2VP層の厚さをpHや塩分濃度などの外部刺激に応じて変えることで、ゲルの色を1秒足らずで変えることができたという。
2VP層の厚さを操作するために、研究者らは2VPブロックの各セグメントにプラスの電荷を与え、水の中で1000%以上に膨らむ多価電解質鎖を作り出した。ゲルに染みこんだ水に高濃度塩イオンを加えるなどをするとこの2VPの鎖が無秩序に絡まり合い、塩イオンを取り除けば、プラスの電荷が反発し合って鎖が伸び、各2VP層が膨らむ。
この層構造は一方向的なものであり、1つの方向に膨らむよう限定されているため、色の変化の幅が広いという。以前に開発された3D格子状の構造のコロイドを使ったゲルは、3方向に膨らむために色の変化の範囲がもっと小さかったと研究者は述べている。
このゲルは塩分濃度のほか、圧力、湿度、気温にも敏感であり、研究チームは電圧に応じて色を変えるゲルにも取り組んでいるという。
研究者らは、このゲルは安価な化学センサーとして使えるかもしれないと述べている。例えば、食品工場で、乾燥した状態でなければならない食物が湿気にさらされていないかを監視するのに使えるという。
この研究成果は10月21日号のオンライン版Nature Materials誌に掲載される。
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