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低コスト・CGMで世界に発信──ユニクロのWeb戦略

» 2007年11月06日 14時34分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 ダンサーの動画が見られるキャンペーンサイト「UNIQLO MIXPLAY」

 キャンペーンにYouTubeを活用したり、ダンサーの動画が見られるユニークなブログパーツを配布するなど、ユニクロは昨年から、CGM(Consumer Generated Media)を活用したWebプロモーションに力を入れている。

 コンテンツは若年層を意識してトータルコーディネートを提案。これまで弱かった若い女性の取り込みや、1人当たりの購入点数増を狙っている。ブログの口コミを活用したWebプロモーションならマス広告と比べて低コストで世界展開でき、「GAP」「ZARA」など競合する海外ブランドに対抗するためのブランド力醸成にもつながるという。

マンネリを打破したい

画像 同社マーケティング部新メディア情報発信チームの勝部健太郎リーダー

 「商品やプロモーションがマンネリになっていたため、既存顧客はリピートしてくれても、新しいお客さんはなかなか来ないという状態になっていた。そこでプロモーションの仕方や商品を変えていこうという方針になった」と同社新メディア情報発信チームの勝部健太郎リーダーは話す。

 ユニクロの顧客の中心は30代〜40代。課題はこれまで少なかった20代前半から中盤の女性客を獲得することだ。昨年から、若い女性に人気のスキニージーンズなど流行を意識した商品を投入するなど、商品ラインアップを変え始めた。

 ECサイトは2001年から展開してきたが、新たに20代を意識したコンテンツを投入。20代前後のモデルがユニクロの服を組み合わせて着用し、コーディネートを提案するキャンペーンサイト「UNIQLO MIX」を昨年8月に開設した。「コーディネートを提案することで、既存のお客さんにもっといっぱい買ってもらうという狙いもあった」

Webなら低コストで世界にPRできる

画像 UNIQLO MIXPLAY

 ユニクロは日本を含む世界5カ国に店舗がある。昨年11月にはニューヨークに旗艦店がオープン。今年11月7日にはロンドンに旗艦店が、12月にはパリにコンセプトショップがオープンする予定だ。

 「ユニクロが海外展開を進める中で、Webでのプロモーションにもグローバルブランディングの視点が必要だと感じ始めた」と勝部リーダーは説明する。

 「日本では中長期的に見ると人口が減っている上、特に少子化で若いお客さんが少なくなってくる。ZARAやGAPなどグローバルに展開しているブランドが日本に津波のように押し寄せており、国内市場では厳しい競争にさらされている。海外ブランドに対抗するためには、ユニクロも海外に打ち出していって、ライバルブランドのマーケットを取っていく必要がある。Webを活用して、世界レベルでユニクロのことを知ってもらおうと考えた」

 Web広告はマス広告と比べて安上がりという面もある。「海外店舗では広告予算があまり取れないから、大々的な広告宣伝活動が難しい。Webを使えばコスト効率もいいし、世界中に均質な情報を発信できる」

 昨年12月にYouTubeを使って展開した「UNIQLO MIX PLAY」のコンセプトは「音楽」と「ダンス」だ。「音楽とダンスは言葉を使わないコミュニケーション。誰が見ても同じように見えるものだからコンセプトに選んだ」という。ダンサーがユニクロのパーカーを着て踊る動画「MIXPLAY」を制作し、UNIQLO MIXのWebサイトとYouTubeで配信した。

 UNIQLO MIXのサイトオープンに合わせ、昨年8月から12月にかけ、Yahoo!JAPANにバナー広告を出稿してプロモーションを行った。「3カ月ほど広告を出したら、たくさんのユーザーがサイトにアクセスしてくれるなど効果が出た。だがYahoo!に1週間バナーを掲載するには数千万円ほど必要。情報を発信し続けるためには、お金のかからない自社メディアを持たなければいけないと考えた」

CGMを自社の応援団に

 そこで目を付けたのがブログパーツだ。テレビCMや大手ポータルへの広告に比べ低コストな上、パーツを貼ったブログが増えれば読者へのアピール度が増していく。CGMの波に乗り、ネット上にユニクロの“応援団”を増やしていこうという作戦だ。

 今年6月に新たにキャンペーンサイト「UNIQLOCK」を開設し、ブログパーツを公開した。


画像
画像 ブログパーツ

 「トラックバックなどでブログは連鎖していくもの。1つ1つのブログの影響力は小さいかもしれないが、それを積み上げていくと大きなメディアになる。ユーザーを通じてユニクロの話題が拡散していく」

 ブログパーツは、UNIQLO MIXのコンセプトである「音楽」と「ダンス」を発展させて「時計」の要素を加え、女性ダンサーが踊る動画とデジタル時計を交互に表示するデザインにした。

 「『NHK時計』のブログパーツのような時計のパーツは人気があるし、ユーザーがブログに貼り付けたくなるんじゃないかと考えた。それに『UNIQLOCK』という言葉もおもしろいと思って」

 今年7月にはUNIQLOCKに、ブログパーツの設置状況を表示する世界地図「WORLD.UNIQLOCK」を追加した。現在ブログパーツは66カ国の約1万3000のブログに貼り付けられており、UNIQLOCKを開設してからの累計ページビューは約4000万だ。「WORLD.UNIQLOCKができたときはぞくぞくした。世界のユーザーが透けて見えて、ユーザーがざわざわしている感じが手に取るように分かる」

画像 WORLD.UNIQLOCK

ブログパーツからECサイトに誘導も

 ブログパーツからユニクロのサイトにアクセスして、商品を購入する人も増えているという。07年8月期通期のオンラインストアの売り上げは過去最高の約125億円(前年比約119%)。「UNIQLO MIXやUNIQLOCKでのプロモーションの効果も現れ始めた」と勝部リーダーは言う。ユニクロの同期の国内売上高は4247億円。オンライン分は約3%に当たる。

 今年8月には、キャンペーンサイトやオンラインストアなどばらばらだったサイトを1つにまとめたポータルを設置。10月には、世界5カ国にあるユニクロショップのスタッフが秋冬コーディネート情報を発信するサイト「UNIQLO JUMP」や、ブログなどからユニクロに関連する書き込みや画像などを自動収集し、一覧表示する「UNIQLO TODAY」を公開するなど、新コンテンツを続々と投入している。「uniqlo.com」ドメインの月間ページビューは約1億1000万、月間ユニークユーザーは約500万だ。

 「オンラインストアが目的でユニクロサイトにアクセスするユーザーは、他コンテンツに目もくれず一目散にオンラインストアを見に行く。一方でたまたまユニクロサイトに来たようなユーザーは色々なコンテンツを回遊していく。ユーザーの目的に応じて使い勝手の良いサイトに改良していきたい」――さまざまなユーザーが楽しめるようにし、オンラインストアでの購入につなげていきたい考えだ。

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