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mixiはなぜ、独り勝ちできたのか 笠原社長が語る

» 2007年11月15日 20時09分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 笠原社長

 「人間関係図を再現する静的なSNSではなく、コミュニケーションによって日々変化する動的なSNSを目指した」――ミクシィの笠原健治社長は11月15日、「Web2.0 Expo」(11月15〜16日、渋谷・セルリアンタワー東急ホテル)の講演で、mixiが国内SNSで独り勝ちした要因を説明し、将来の展望を語った。

 今後は、Googleが提唱するSNS共通API「OpenSocial」に則ってAPI公開を進め、ユーザー自身が欲しい機能を追加できるようにしていくほか、小説や音楽など「文化的なコンテンツ」が集まる仕組みを整えていくという。

「動的」だから勝てた

 mixiがスタートしたのは2004年2月。米国で流行し始めていたSNSを参考に、「日記」「足あと」など独自機能を盛り込んで構築した。国内では当初「GREE」がmixiを上回る会員を集めていたが、同年秋ごろユーザー数でGREEを逆転。続々と参入する他社をかわし、圧倒的ナンバーワンに駆け上った。

画像 会場は満席で立ち見も出る盛況

 mixiの強さの理由は4つあると笠原社長は言う。(1)当時のネットユーザーが持っていた「リアルな人間関係とつながったサービスがほしい」という潜在的ニーズをくみ上げたこと、(2)CGM(Consumer Generated Media)が一般化するタイミングで、その波に乗れたこと、(3)人が集まるほど価値が高まる「ネットワーク外部性」が働くこと、(4)コンテンツが“動的”であること――だ。

 GREEなど他SNSとの差別化では(4)が決定的な要因となった。「米国や国内他社のSNSは、人と人とつなぐだけの“静的”なものが多かったが、それだけではサービスとして続かないと思った」――mixiが最重要視したのは、静的な人間関係図作成で終わらないサービス。「人と人とがつながった上で、コミュニケーションできるSNSを目指した」

 日々更新される日記や、アクセス履歴を示す「足あと」、最終ログイン時間を示す機能などをオリジナルで搭載。「日記を書いたらそれにコメントがもらえ、さらに返信のコメントをして――アクションとリアクションの繰り返し。アクセスするたびにコンテンツが変わるから、それを楽しみにまたアクセスしてもらえる。それが高いアクティブ率につながった」

 mixiのアクティブ率(3日以内にログインしたユーザーの割合)は、オープンから2年は70%以上をキープ。登録会員数が1200万人を超えた今でも60%を確保している。

多様性に応えられる「自分ポータル」

 mixiは「自分ポータル」でもある。「一般的なポータルサイトのように画一的ではなく、1200万人全員が異なるページを持っている。友人の情報など、自分にとって必要な情報が必要な順番に並ぶ、自分中心のメディアだ」

 今後もカスタマイズ性を高めていきたいという。「画一的な情報は今後も必要とされるが、個人の趣味し好が多様化した時代は、フルフルにカスタマイズできるサービスへのニーズが強まる。mixiは今後も、このポジションを取っていきたい」

ユーザーが作る新機能で、mixiは進化できる

 多様化したニーズに対応するためには、サービスメニューも多様化していく必要がある。「当社でも新サービスを投入していくが、ユーザーにも作ってほしい」と笠原社長は言う。

 SNS共通API「OpenSocial」に基づきAPIを公開していく予定。mixiのプロフィール情報などを外部アプリなどに取り込めるようにするほか、mixi内部の機能も、ユーザーに作ってもらえるようにする

 「写真や動画を分類する機能や、ゲームなどがまず考えられるだろう。将来は、mixi日記やコミュニティなどと並ぶサービスが出てきて、mixiをダイナミックに変えてもらえれば。思いもよらないようなサービスをユーザーが作ってくれることを期待している」

 ユーザーの手による機能を実装することで、mixi全体の活性化にもつながるとみる。「mixiコミュニティの管理人がコミュニティに愛着を持ってくれるように、自分が作ったアプリがmixiじゅうに広まるとうれしいだろうし、mixiの盛り上がりを自分のこととしてとらえてもらえるだろう。それが実現したとき、mixiも進化できる」

 API公開でmixiのコンテンツを外部からでも見られるようになれば、mixi内部のページビューが減って広告インプレッションも減り、広告収益に打撃を与える恐れもある。

 「API公開は慎重にしていくが、トラフィックの一部を奪われる可能性はあるだろう。ただ、外部サイトで一部機能が利用できるようになっても、mixiに訪れて続けてもらえるような強いサービスに進化させていきたい」

小説、音楽など「文化的なコンテンツが集まる場に」

画像 1970年代はメインフレームが普及し、IBMなどが中心となった「企業の情報化の時代」、1980年〜1995年はPCが広まり、IntelやMicrosoftなどが発展した「個人の情報化の時代」、1995年〜2005年はネットが普及してYahoo!やGoogleなどが活躍した「社会の情報化の時代」、2005年以降は「文化の情報化の時代」いう

 「2005年以降は文化の情報化の時代」――笠原社長は「ある書籍からの引用」と断った上で、今後の「情報化」の方向性をこう定義する。

 「今後は音楽や映像、画像、小説などといった芸術的なもの、文化的なものが情報化され、オンライン上に載っていくだろう。mixiは文化的なコンテンツが生成され、流通し、集積していくプラットフォームになりたい」

 具体的なサービス計画は明らかにしなかったが「文化的コンテンツは携帯電話と相性がいい」と話しており、携帯サイトで人気のある小説や楽曲投稿サービス、音楽配信などの導入が考えられる。

収益化は「Facebookに引けを取らない」

 米comScoreの調査によると、PC向けmixiの月間PVは米国最大のSNS「MySpace」の約10分の1、米国3位の「Facebook」の約7分の1と、PVでは世界の巨大SNSにまだまだ及ばない。

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 「サイト規模では小さいが、収益化はうまくいっている。当社の今期の売上高見通しは97億円。Facebookの年間売上高は1億5000万ドル(約170億円)という報道を目にしたが、収益的にはそう開いていない」

 収益の大半が広告から。ユーザー属性でターゲットを絞った広告や、コミュニティーを活用した広告、動画広告などが好調という。

 同社の事業はmixi中心だが、今後は他分野のサービスも展開していきたいという。「ネット上にはまだまだいろんなチャンスがある。mixi以外でも新しいサービスを出していきたい」

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