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米大手ISP、P2Pトラフィック規制で訴えられる

» 2007年11月19日 14時11分 公開
[Roy Mark,eWEEK]
eWEEK

 「ネットワークトラフィック差別」と言われている米Comcastの行為が、同社に法的な問題を次々ともたらしている。米連邦通信委員会(FCC)への苦情申し立てに続き、集団訴訟に発展しそうな裁判が起こされた。

 サンフランシスコのComcast加入者ジョン・ハート氏は11月15日に、ComcastがBitTorrentやGnutellaなどのP2Pファイル交換ネットワークを減速あるいは遮断していると訴えた。同氏は裁判所に、この訴訟をカリフォルニアのComcast加入者すべてをカバーする集団訴訟として認めるよう求めている。

 米第2位のブロードバンドISPのComcastが合法的なアプリケーションやコンテンツのアップロード・ダウンロードを遮断、減速するなど、ネットワークトラフィックを「締め付けている」とAssociated Pressが報じて以来、同社はネットワークの中立性をめぐる議論の中心となってきた。

 「Comcastは、P2Pも含め、特定のWebサイトやオンラインアプリケーションを遮断していないし、したことはないし、今後もしない」とComcastは声明文で述べている。同社は10月22日に、ネットワーク管理のために一部のトラフィックを遅延させていることを認めた

 ネットワーク中立性の侵害を訴えるFCCへの苦情申し立てとは異なり、ハート氏は契約違反と取引上の信義を損なう行為を提訴の理由としている。同氏は9月に、Comcastの「Performance Plus」サービスにブロードバンドサービスをアップグレードした。このサービスは、ビデオやゲームなどの大容量ファイルを最高12Mbpsでダウンロードできると約束している。訴状には、同氏はファイル共有を利用するためにサービスをアップグレードしたと記されている。

 Comcastの帯域制限により、同氏のダウンロードは大幅に速度が落ちたり、停止したりしたと訴状にはある。

 「被告は、虚偽であり誤解を招くと知っている、あるいは当然知っているはずの広告を広めてきた上に、広め続けている」と原告は訴えている。「この行為には、実際には特定アプリケーションに関して当該サービスの速度を大きく制限していながら、無制限で高速接続が適用されると宣伝したことが含まれる」

 ハート氏が訴訟を起こす前日には、BitTorrent技術を使ってビデオを配信しているVuzeが、ComcastなどのブロードバンドISPがネットワークトラフィックを「締め付ける」のを禁じるルールを確立するようFCCに嘆願している。Vuzeは、Comcastの行為はFCCのネットワーク中立の原則に反すると主張している。

 Vuzeの嘆願書には、帯域規制はハッカーがよく使う「中間者攻撃」の手法で行われることが多いと記されている。インターネット接続をシャットダウンする偽のコンピュータメッセージを作り出すという手口だ。ユーザーにトラフィックを流し続けるために、コンテンツ制作者や配信業者はハイテクいたちごっこを強いられている。

 「Comcastは自社の行為を合法的な『ネットワーク管理』あるいは単なるトラフィックの『形成』として正当化しているようだが、Vuzeはこのような内密の、あまりに広範なトラフィックへの干渉は――コンテンツが合法かどうか、あるいはネットワークへの影響にかかわらず――『妥当なネットワーク管理』にはなり得ないと確信している」(Vuzeの嘆願書より)

 さらにComcastに対して、権利団体およびイェール、ハーバード、スタンフォードの各大学の法学者が11月1日に、ネットワーク中立性の見地からFCCに苦情を申し立てている。

 Vuzeの主張と同様に、この申し立てもFCCに対し、BitTorrentなどのP2P通信の遮断は、FCCの「Internet Policy Statement(インターネット政策宣言)」に違反すると定めるよう求めている。この宣言は、2005年に発行された4つの原則から成り、「事業者間の競争と、すべてのコンテンツ、アプリケーション、サービスへのアクセスを消費者に保証する」ことを目的としている。

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