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2015年、テレビは「ニコ動」化する?――NRIが示す未来像(2/2 ページ)

» 2008年02月05日 18時27分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 デジタルネイティブとトレンドフォロワー双方に受け入れられるメディアなら、一般にも広がっていく力があるはず。そんな想定で次世代テレビのシナリオを描き、イメージ映像化して公開した

 その内容は「2011年、多様なコンテンツから好みのものを選んで視聴できる『コンテンツ・シンクロナイザー』が登場。2013年には、視聴者がコンテンツを評価し、評判に応じてクリエイターに報酬が回る『コンテンツ・エバリュエーター』が登場する。優秀なクリエイターがメディアを超えて活躍し、日本がクリエイティブ産業の集積地になって海外市場でも存在感を発揮する」というものだ。

次世代テレビは「ニコニコ動画」のように?

 このシナリオに登場する次世代テレビは、(1)多様なコンテンツをオンデマンドでいつでも利用できる、(2)検索やリコメンドで見たいコンテンツに簡単にアクセスできる、(3)視聴者同士で感想を言い合ったりしてコミュニケーションできる、(4)視聴者がコンテンツやクリエイターを直接評価できる、(5)評価に応じた報酬がクリエイターに支払われる――といった特徴がある。

 「ネット上ではすでに実現されているものもある」と同社情報・通信コンサルティング部の北林謙主任コンサルタントは言う。完全な形ではないにせよ(1)と(2)はYouTubeやニコニコ動画で実現済み。(3)はニコニコ動画のコメントの仕組みを、1つのモデルとして挙げる。


画像 次世代のテレビは視聴者同士で感動を共有できる
画像 視聴者の評価も集積できるように

 (4)も、ニコニコ動画やYouTubeである程度実現されている。YouTubeでは再生数で、ニコニコ動画では再生数やコメント数、コメントの内容、マイリスト登録数などで、ユーザーの評価が動画投稿者に直接伝わるようになっている。

 (5)は、現行のコンテンツ流通の問題点を解消するための仕組みだ。日本のコンテンツ産業はメディア(テレビ局やレコード会社など)に多くのお金が回り、製作者は十分な報酬を得ていない――という問題が指摘されている。加えて、テレビ局を中心としたメディアが優秀なクリエイターが囲い込んでおり、メディアの枠を超えた活躍も難しい。

 視聴者の評価に応じた報酬が直接クリエイターに回るようになれば、メディアではなくクリエイターを軸にしたコンテンツ製作サイクルができていくと想定。優秀なクリエイターやコンテンツにお金や評価が集まり、メディアの枠組みを超えた競争が起きて作品の質が高まり、コンテンツ産業活性化につながる――という青写真を描く。

ネットの現場はすでに変化している

 実現への課題は多い。新機能が実現したとして、その機能が付いたテレビをいかに普及させるかというハード面の課題や、報酬を適正に分配できる評価の仕組み、著作権の管理体制構築、クリエイターの育成環境の整備などだ。

 希望の光は、日本のクリエイター層の厚さだという。「日本人は、誰でも漫画がある程度描けるし、インディーズアーティストの数も多い。ニコニコ動画がそれを証明している」(北林さん)

画像 動画は「もしかしたら2015年に活躍しているクリエイターは、あなたかもしれません」というメッセージで終わる

 ニコニコ動画では例えば、質の高いオリジナル楽曲が発表されると、別のユーザーがプロモーションビデオを作ったり、歌詞の字幕を付けたり、伴奏を付けたり、カラオケで歌って発表したり――と、創造のサイクルが高速に回転。海外のユーザーが母語でその楽曲を翻訳して歌うなど、コンテンツの国際化も起きている。

 「コンテンツ産業を考える時、制度や業界のあり方に目が行きがちだが、現場は制度と関係なく進んでいる。長期的に世界を変えるのは、技術と創造力だ」(北林さん)

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