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ビル・ゲイツ氏が語るこれからの革新

» 2008年02月21日 17時07分 公開
[Peter Galli,eWEEK]
eWEEK

 米カリフォルニア州パロアルトのスタンフォード大学では2月19日、Microsoftのビル・ゲイツ会長の講演を聞こうと、多数の学生、教職員、招待客らが雨の中、列を成した。

 講演のテーマは、ソフトウェア、革新、企業家精神、そして社会への還元。ゲイツ氏が壇上に姿を見せると、会場は嵐のような拍手に包まれた。スタンフォード大学のキャンパスには、同氏の寄付で建てられ、同氏の名前を冠した「GATES COMPUTER SCIENCE」と呼ばれる建物もある。

 聴衆の多くはゲイツ氏がMicrosoftを創業したずっと後に生まれたような若者だが、同氏は講演の冒頭でまず創業当時のエピソードに言及。Microsoftの現CEO、スティーブ・バルマー氏にMicrosoftへの入社を勧め、スタンフォード大学経営大学院を中退させたいきさつに触れ、「彼は大学は卒業したけれど、それでもわたしと同じ中退者だ」と冗談を飛ばした。

 続いてゲイツ氏は、豪華ゲストが多数出演した「ゲイツ氏、Microsoftでの最後の1日」とでも呼ぶべきパロディービデオを披露した。同氏は2008年7月で同社の第一線から退き、Bill & Melinda Gates Foundationの共同会長として慈善活動に専念することになっている。

 だがゲイツ氏は、Microsoftの革新を駆り立てるための取り組みには今後も関与していく意向を明らかにしている。「自然言語ユーザーインタフェースやナレッジの構造化など、今後も大きな取り組みにかかわっていく」と同氏。

 続いてゲイツ氏は「Microsoftを起業して以来、世界は様変わりした」と語り、今ではニュースや楽曲をオンラインで入手したり、旅行の予約をオンラインで済ませるのが当たり前になっていると指摘している。「わたしの娘はレコードがどんなものかを知らない。わたしはいつかレコードを彼女に見せたいと思っているのだが」と同氏は語り、さらに、インターネットが世界中の距離をいかに縮めたかを強調した。

 ゲイツ氏は、自分の子供たちが尋ねてくる、すぐには答えられないような難しい質問の答えを求めてインターネットを利用するのが常になっているという。

 さらに同氏はこの45分間の講演において、Microsoftの研究開発の取り組みについても言及した。同社は研究開発に年間60億ドル以上を費やし、世界中に研究所を設立しているという。「こうした研究活動はリスクへの対処が中心だ」と同氏。

 ソフトウェアは科学のさまざまな分野でますます重要性を増しており、Microsoftは主要大学やそのほかさまざまな研究機関の科学者に協力できるよう最善を尽くしているという。

 さらにゲイツ氏は、世界で最も豊かな国である米国と発展途上諸国との間にある格差についても言及した。そして同氏は聴衆に対し、世界を変え、人を助けるために自分の知識や能力を生かすよう呼び掛けた。

 「今の時代に学生であるということは素晴らしいことだ。皆さんの今後の活躍が非常に楽しみだ」と同氏は語った。

 また予想されていた通り、ゲイツ氏はMicrosoftの新しい学生支援プログラム「DreamSpark」についても話題にした。このプログラムは、学生がさまざまなソフトウェア開発ツールや設計ツールを無償でダウンロードできるようにするための取り組みであり、現在、ベルギー、中国、フィンランド、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国などで、3500万人以上の学生に提供されている。

 一部の観測筋は、このプログラムには、より多くの開発者にMicrosoftのプラットフォームを支持してもらうだけでなく、Javaやオープンソースツールを使うようになる前に若くて優秀な人材を取り込んでおこうという狙いがあると考えている。

 スタンフォード大学の学生に講演を行ったMicrosoft幹部はゲイツ氏だけではない。2007年5月には、バルマー氏が同大学の経営大学院を訪れ、企業でのリーダーシップや経営について講演している。

 この講演では、バルマー氏も学生に対し、IT分野での活躍を促している。

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