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YouTubeに初の音楽著作権包括許諾・JRC スピッツやラルクもOK

» 2008年03月27日 13時43分 公開
[ITmedia]

 L'Arc-en-Cielやスピッツなどの有力アーティスト楽曲を管理する音楽著作権管理事業者、ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)と、動画共有サイト「YouTube」を運営するGoogleは3月27日、JRC管理楽曲の著作権について、YouTubeでの利用について包括利用許諾契約を結んだと発表した。JRC管理楽曲をユーザーが演奏し、YouTubeにアップロードして公開できるようになる。音楽著作権管理事業者によるYouTubeへの包括利用許諾は国内初。

photo JRCの荒川代表取締役(右)とグーグルの村上社長

 JRCは国内アーティストをマネジメントする音楽プロダクションらが中心になって設立、2001年に文化庁に登録した音楽著作権管理事業者。Mr.Children、東京事変、BENNIE Kなど有力アーティストやインディーズなど約5000曲を管理し、2007年度の使用料徴収実績見通しは約9億円。アーティスト自身がポッドキャスティングを行う際に著作権使用料を免除するスキームの構築や、定額制音楽配信向け使用料規定を業界に先駆けて制定するなどの取り組みをしてきた。

photophoto JRC管理楽曲の例とユーザーができること

 YouTubeへの包括利用許諾は27日から有効。JRC管理楽曲をユーザーが演奏したり、歌ったりした映像をYouTubeにアップロードして公開することができるようになる。バンドでカバー演奏したライブの模様を撮影してYouTubeで見てもらう──といったことが可能になる。

 ユーザーは無料で利用できる。GoogleがJRCに対して利用料を支払う形だが、詳細は非公開としている。

 ユーザーが利用できるのはJRCが管理している楽曲のメロディと歌詞に限られる。著作隣接権は範囲外のため、アーティストのプロモーションビデオや、レコード会社が原盤権を持つCD音源をそのままアップロードする行為は従来通り認められない(隣接権者が認めれば可能だが、今回の契約には含まれず、別の許諾契約が必要になる)。

 YouTubeは国内最大の管理事業者、日本音楽著作権協会(JASRAC)とも利用許諾について協議している。JASRACはソニーの「eyeVio」、ヤフーの「Yahoo!ビデオキャスト」と同様の許諾契約を結んでいる。

フォーライフなどが公式チャンネル

photo デンジャー・クルーの公式チャンネル

 契約に合わせ、JRC管理楽曲のアーティストが所属するフォーライフミュージックエンタテイメントと、大手インディーズレーベルのデンジャー・クルー・エンタテインメントがYouTubeに公式チャンネルをオープンする。

 フォーライフは4月4日に開設予定。新譜を中心に、DOUBLE、BENNIE K、阿部芙蓉美などの最新ビデオやライブ映像などを順次公開する予定。デンジャー・クルーは3月27日にオープン。第1弾としてムック、シド、ギルガメッシュなどのビデオをフルレングスで配信する。

 今後、BO-PEEP(サード・ストーン・フロム・ザ・サン所属)、Sweet Vacation、ピストルバルブ(バグ・コーポレーション所属)などの公式チャンネルも順次オープンする予定。

「より深い音楽体験につながれば」

photo 左からデンジャー・クルーの大石社長、グーグルの村上社長、フォーライフ所属の阿部芙蓉美さん、JRCの荒川代表取締役、フォーライフの後藤社長

 「アーティストが望むことを形にする、それがファンのためでもある」──JRC代表取締役の荒川祐二氏は、同社の管理コンセプトを説明する。国内初となるYouTubeへの包括利用許諾について「音楽業界と、YouTubeなどのネットサービスにいい影響与えられるのでは」と期待する。

 スピッツの「空も飛べるはず」を卒業記念に演奏し、DVDを作りたい──という利用許諾の申し込みが多いという話を紹介し、「これまでは作ったDVDを卒業アルバムに挟んでおしまいだったのが、YouTubeにアップロードすることがキーになってコミュニケーションが広がればうれしい」と話す。スピッツのYouTube公式チャンネルは今夏にもオープンする予定といい、「オリジナルと卒業記念の演奏が同じYouTube上で見られるようになる。これはより深い音楽体験につながるのでは」

 グーグルの村上憲郎社長は「YouTube上で音楽を楽しんでいるファンの利便性が一気に向上するのを一緒に喜びたい。アーティストが日本にとどまらず、世界に展開するためにYouTubeがプラットフォームとして手伝えるのもうれしい」と話した。JASRACとの協議についてはコメントを避けた。

 デンジャー・クルー・エンタテインメントの大石征裕社長は「(設立当時の)1985年は『JASRACに登録していないと違法』だと誤解されているような状況もあり、反骨精神から著作権を自主管理してきた。JRCができたときには諸手を挙げて賛成した」という。

 同社所属アーティストにはいわゆる「ヴィジュアル系」が多く、“クールジャパン”の勢いに乗って海外にもファンが広がっているが、その原動力は「ユーザーに勝手に上げていただいた」というYouTubeの映像だ。「メディアとしてはすばらしい力。今までは無秩序なところもあったと思うが、包括許諾はアーティストも喜んでいる。放送にはマイナーなものは扱ってもらえないため、公式チャンネルで独自のものを供給していければ」と語った。

 フォーライフの後藤由多加社長は「近いうちにJASRACともクリアになると思うが、YouTubeに積極的に参加していきたい。一般ユーザーの参加で大きくなったYouTubeに、われわれによる作り物という形で入っていくことの懸念もあるが、試行錯誤しながらやっていければ」と話した。

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