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「じぶん銀」――ケータイ専業新銀行、なぜ必要だったのか(2/2 ページ)

» 2008年08月08日 11時36分 公開
[西川留美,ITmedia]
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 たとえば、自分の携帯電話のアドレス帳から金額を指定して振り込めるサービス「ケータイ番号振込」がまさにそれだろう。auおよびじぶん銀行の両方の契約者であれば、auでの契約者情報とじぶん銀行での口座情報が銀行内でひもづき、システム内で電話番号を口座番号に置き換えることによって振込が可能になる。居酒屋で手持ちがなくてお金を相手に払ってもらった時、その場で携帯電話を使ってお金を返す、なんてこともできるわけだ。


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 じぶん銀行の銀行口座は自分の携帯電話からでしかアクセスできないので、常に携帯電話会社と銀行との両方から本人確認をしていることになる。二重確認をしているような形になり、安全性が高まるわけだ。

契約時も来店不要

 同行は口座開設時も店に行く必要がない。本人の同意があれば、auの契約者情報がそのまま利用されるので、名前や住所の入力作業もなく開設でき、携帯電話だけですべてが完結する。本人確認は免許証を携帯カメラで撮り、その画像データを送るだけ。紙も印鑑もいらないという徹底ぶりだ。また、au利用者であれば、KDDIから銀行へと情報がアップデートされるので住所変更などの面倒な手続きも不要だ。

 電子マネーでは現在はEdyに対応しているが、「いずれはSuicaやnanacoなどへの対応も実現したい」(中井氏)という。

 じぶん銀行はドコモでもソフトバンクモバイルでも利用は可能である。ただし、番号振込サービスなど一部サービスはauでしか使えない。「auを使うとプラスアルファの機能が使えたり、『じぶん銀行を使ってauの電話料金を支払えばauポイントが増量する』などKDDIとの連携サービスが利用できたりする」(中井氏)という方針のようだ。

収益の柱は手数料収入

 同行の収益の柱はやはり決済サービスによる手数料(役務収益)だ。電子マネー、auのサービス(auショッピング、auオークション、auブックスなど)によるECの決済、番号振込等の手数料が想定される。将来的には提携先も増やしていく構えで、au以外のキャリアのサービスに対しても広く提携していきたいという考えだ。

 ネット銀行であるぶんコストが抑えられるため、決済手数料は安く、預金はメガバンクよりも高めの金利に設定して他行との差別化を図る。

 年内にはカードローンへの参入も考えている。申込は携帯電話で完結し、借り入れに関する連絡は銀行から携帯メールが届くという、携帯電話の機能を生かした独自スタイルのカードローンになりそうだ。もちろん、将来的には保険・証券への参入も視野に入れている。

 3年で240万口座・1兆円という目標を掲げる同社の当面の課題は「利用者を増やし、使えるシーンを増やしていくこと」(中井氏)。親会社である二社が銀行代理業者となっているため、口座獲得のアプローチはBTMUの店頭やauショップでの案内が中心になりそうだ。

 モバイルを使った決済の市場はまだまだ小さく、拡大の余地が大きいため、競合を意識するというよりは市場そのものを活性化する方針だ。ターゲット層も若い年齢だけには限っておらず、たとえば「かんたんケータイ」のようにアプリの文字が大きかったり、テレホンバンキングの提供もメインチャネルのひとつとして充実させるなど、どんな年齢の人でも使うことができるようセグメント別にサービスも変えていく構えだ。

 「SNSなどを見ても、初めはPCからスタートしたものがモバイル利用者が逆転しているものがたくさんあります。金融サービスも例外であるはずがなく、今まで十分なサービスが提供できていなかったということ。だからこそ使い勝手のよいものを作り、使われる銀行にしていきたい」と中井氏は意気込む。

 今年の秋冬モデルからはauのメインメニューとして同行のサービスが入る予定だ。「携帯電話で幅広いサービスを提供したいというBTMU、auのユーザーへよりリッチなコンテンツを提供したいというKDDI、こうした親会社の思いを、いかに当行が実現するか、そして顧客満足度を上げていくかというのがビジネスの最終目標。そこにまい進していきます」(中井氏)

 真の意味での「じぶん銀行」になれるか。

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