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「こんな“お化けサイト”になるとは思っていなかった」――「発言小町」なぜ人気

» 2008年08月19日 13時25分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「こんなお化けサイトになるとは思っていなかった」――「発言小町」運営に長く関わってきた読売新聞グループ本社社長室知的財産担当の川内友明さんは言う。

 発言小町は、YOMIURI ONLINE(YOL)内の女性向けサイト「大手小町」内にある掲示板コーナー。質問や相談を匿名で投稿したり、投稿に対してレスを付けたりすることができる。


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画像 掲載されている投稿の例

 投稿は、ちょっとした質問から恋愛相談や嫁姑の悩み、子育ての悩み、日ごろの愚痴など多種多様だ。「麦茶に何を入れますか?」「夫が本気の不倫……私はやり直したい」「何を作っても美味しいと言わない義理の両親」――匿名で投稿される質問や悩みごとに、匿名の読者から回答が寄せられる。

 すべての投稿を編集部でチェック。誹謗中傷や読者を傷つけるような投稿は掲載を拒否したり、編集してから掲載する。1日の投稿数は約3000件。ページビュー(PV)は非公開だが、月間1億PVという大手小町の大半を発言小町が占めているという。ユーザーは20代後半から40代の女性が中心だ。

匿名投稿OK、だが事前チェックを

画像 投稿欄。絵文字も使える

 1999年にスタートした。「読売新聞ネット版にも、新聞と同様の投書欄を作ってみよう」という着想。「普通の投書欄では面白くないから、女性をターゲットにした投書欄にしようと考えた」(川内さん)という。

 ただ、どんな内容が書かれるか分からない掲示板を新聞社サイトに置くのはリスクが高い。内容をいったんチェックした上で、必要ならば掲載を拒否したり、編集を加えて掲載する仕組みにした。

 投稿数は当初1日数件程度だったが徐々に増えていった。当時は女性をターゲットにした掲示板自体がほとんどなく、女性ユーザーが集まったこと、匿名で投稿できること、書き込みの事前チェックが入るから、ネットで“叩かれる”ことを恐れる人でも安心して投稿できること――などが、人気の背景にあると編集部ではみている。

 投稿は専従のスタッフがチェックして掲載。掲載基準は編集方針にある通りで、読者が不快な思いをする投稿や誹謗中傷に当たる投稿は掲載しない。

 できるだけ自由に発言してもらえるよう「簡単な最小限のチェックにとどめている」と、同社メディア戦略局編集部の遠山留美さんは言う。最近は投稿ルールが浸透し、不適切な投稿をするユーザーも減ってきているという。

「発狂小町」閉鎖問題

 発言小町の投稿から面白いものをピックアップする「まとめサイト」もある。個人的なファンなどが同社に無断で運営しているもので、人気があったのは「発狂小町」という名のサイト。このサイトを通じて発言小町を知った人も多かった。だが同社は、発狂小町が著作権を侵害しているとして、プロバイダー責任制限法に基づいて削除を依頼。サイトは6月に閉鎖された。

 同社はもともと発狂小町の存在を知らなかったが、「発言小町の投稿者さんから『発言小町に送った投稿が無断転載され、からかうようなコメントが付いている』というクレームが付いた」(川内さん)ことで知ったといい、どう対応すべきか社内で議論した。

 「できれば残しておきたかった」と川内さんは言う。投稿をほぼまるまる転載していたため著作権を侵害していたことは明白だが、発言小町の良さをうまく凝縮して伝えてくれており、たくさんの“発言小町ファン”を生んでくれた側面もあった。

 ただ「『発狂』小町」というネガティブなネーミングや投稿の取り上げ方が投稿者を不快にさせる恐れがあると考えた。「実際にユーザーからクレームが来ている以上、放置はできないと考え削除依頼を出した」(川内さん)。運営者は削除依頼に素直に従ったという。

 川内さんは「発言小町を応援するようなまとめサイトなら、話し合いの末、共存共栄できたと思うが、クレームが付くような形だったことが残念」と話す。ポジティブなまとめサイトなら「公式まとめサイト」として共存共栄を図るといったことも検討したいという。

リニューアルでPV3倍に

 07年3月には大手小町の携帯電話向けサイト(月額105円)を開設し、携帯から発言小町の投稿・閲覧が可能に。08年2月に発言小町のPCサイトをリニューアルし、投稿記事をジャンル別に分けて表示する機能やRSS配信機能、ブックマーク登録機能などを追加した。それ以前は月間3000万程度だった大手小町全体のPVはリニューアル後に急増。5月には1億を超えた。

 1億PV突破を記念して8月には、記事投稿や閲覧ができるデスクトップツールとブログパーツを公開。サムライワークスと共同で制作したもので、発言小町の人気トピックの閲覧や記事投稿、検索などができるほか、YOLの記事見出しも配信。発言小町ユーザーをYOLに誘導する狙いもある。9月には投稿の一部をまとめた書籍も発刊する。

 PVが1億の大台に乗ったことで社内外への認知度も急速にアップしたという。2月ごろから広告展開も開始。スポンサーの商品に関連する投稿を募集し、マーケティング資料にしてもらう。これまでにニッカウヰスキーの企画で「ウイスキーを飲むのってどんなとき?」と質問したり、読売ホームガイドが「あなたは賃貸派? それとも購入派?」と聞いたりしている。「掲示板サイトには広告が入りにくいという先入観があったが、打破していきたい」と同社メディア戦略局編集部の神崎公一さんは言う。

 「こんなお化けサイトになるとは思ってもみなかったが、ユーザーさんの投稿のおかげで今や、看板サイトになっている。この先はユーザーさんがどうされるかをお決めになればいいと思う。いろんな方が、いろんな話題で話し合い、楽しく井戸端会議していただければ」(川内さん)

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