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NVIDIAのGPUでさらに羽ばたく東工大「TSUBAME」

» 2008年12月03日 07時00分 公開
[ITmedia]
photo NVIDIAのジェン・スン・フアン社長兼CEO

 「スーパーコンピューティングの歴史に残る日。5年前に夢見ていたことが実現した」──米NVIDIAのジェン・スン・フアン社長兼CEOは12月2日、東京工業大学のスーパーコンピュータ「TSUBAME」がGPUコンピューティングの導入で強化されたことを喜んだ。

 TSUBAMEは多数のOpteronサーバなどをグリッド化したスーパーコンピュータ。このほど、NVIDAの「Tesla GPU」を導入して処理能力を強化。理論ピーク性能を約160TFLOPSに高め、Linpackベンチマークで77.48TFLOPSをマーク。スーパーコンピュータの世界ランキング「Top500」で29位に入った。

 NVIDIAは、グラフィックスに使われてきたGPUの高い処理能力を科学技術計算などにも活用するGPUコンピューティングの普及を推進している。来日したジェン・スン・フアン社長兼CEOは、TSUBAMEが稼働している東工大大岡山キャンパス(東京都目黒区)を訪れ、「演算処理によって科学に貢献できるのはわれわれにとっても非常に光栄なことだ」と喜び、「従来のCPUが全ての問題解決に向いているわけではないことの証だ。プロセッサはCPUだけではない。GPUとCPU、2つのプロセッサによるヘテロジニアス(異種混合)な構成が必要になる」などと話した。

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GPUは「クラシックなベクトル計算機に類似」

photo TSUBAME 1.2の構成

 同大学術国際情報センターの松岡聡教授によると、GPUは(1)ピーク性能の高さ(N体問題などの密結合問題に適する)と、(2)3次元高速フーリエ変換性能の高さをもたらすメモリバンド幅の大きさ(疎結合問題に適する)という2つの特徴を持ち、性質の異なる問題解決をアクセラレーションできる。「クラシックなベクトル計算機に類似している」が、技術的な制限などもあり、多数の汎用CPUによるスカラー型を主流にしたような多くの研究が必要だと指摘する。

 松岡教授は「ソフトは当初はうまくいかなかったが、『CUDA』のようなプログラマブルなGPUが出てきてうまくいった」と話す。スーパーコンピューティングでは、計算を実行させるプログラム開発も重要になる。Teslaの導入では唯一のベクトルスーパーコンピュータベンダーであるNECが協力しており、同社のノウハウ活用も考えているが、「GPUはワークステーションやパーソナルなところから出てきているので、デバッギングなどでまだまだのところがある」という。

 GPUの汎用化を進めるNVIDIAに対し、米Intelはx86アーキテクチャを採用するGPU「Larrabee」の開発を進めるなど、GPUとCPUを近づけていくていく方向でプロセッサの将来を描いているが、松岡教授は「GPUはシンプルなため、開発サイクルが早いから進化している。GPUの良いプロパティを犠牲にしてまでCPUに近づいてほしくない。計算はヘテロに分担したほうがいいと思っている」と話した。

 GPUコンピューティングの導入で「1.2」に進化したTSUBAMEは、2010年度に「2.0」にバージョンアップし、処理能力をペタレベルに高める計画だ。

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