2010会計年度第2四半期に好調な業績を記録したにもかかわらず、Microsoftは「衰退している」と同社の元幹部は語る。その理由は、Microsoftには革新が起こせないから、そして、ヒットの可能性があるプロジェクトが内紛でつぶれてしまう傾向があるからだ――と、約10年前にタブレットPCなどのプロジェクトに携わっていたというこの幹部は話している。
「われわれが2001年にタブレットPCを開発していたとき、当時Officeを担当していた副社長がこのコンセプトを気に入らないと考えた」と1997〜2004年にMicrosoft副社長だったディック・ブラス氏は2月4日、New York Timesのコラムで述べた。「タブレットにはスタイラスが必要だった。彼はペンよりもキーボードの方が好きだったし、われわれの取り組みは失敗すると思っていた」
オンラインで話題になったブラス氏のコラムによると、Office担当副社長は、「人気のOfficeアプリケーションを、タブレットとうまく連係するように改造することを拒んだ。このため、スプレッドシートに数字を入力したり、電子メールの内容を修正するのに、特別なポップアップボックスに書き込んで、それをOfficeに転送しなければならなかった」。このプロセスは面倒だったとブラス氏は語る。そして今日に至るまで、「まだタブレットPC上で直接Officeを使うことはできない」という。
ブラス氏が言うには、AppleがタブレットPCを開発しているという「確信」があったのにもかかわらず、Microsoftのタブレット部門は最終的に閉鎖された。だが、Microsoftのここ数年の問題のすべてが内紛によるものというわけではないと同氏は言う。「問題の一部は、Microsoftが従来(リスクの高い)ハードをやらずに(利益率の高い)ソフトを開発することを好んできた点にある」
このスタンスは1975年ならば理にかなっていたかもしれないが、「今は、iPhoneやTiVoのような緊密に統合され、美しくデザインされた製品を作り出すのを極めて難しくしている」とブラス氏は付け加えている。
Microsoftはブラス氏のコメントに前向きに応えようとしている。2月4日のMicrosoftのOfficial Microsoft Blogで、広報担当のコーポレート副社長フランク・シャウ氏は次のように述べている。「元Microsoft社員のディック・ブラスがNYTのコラムで、Microsoftのいい時代は過ぎ去ったと主張している。彼は自分の在籍時の例を挙げて、Microsoftはもはや競争も革新もできないと言っている。明らかに同意できない」
シャウ氏は、Microsoftにとって最も重要なのは、「広範な影響」を持つ技術を提供できる能力だと主張している。このパラダイムは、スピードよりも市場への普及に依存するという。「今になって、『あれをもっと早くやるべきだった』と言うことはできる。時にはそうするべきだったこともある。だが、非常に多くの人々に接する製品を提供する企業にとっては、スピードある革新ではなく、スケールのある革新が重要なのだ」
特にAppleのiPad立ち上げが予想されていたことから、MicrosoftはタブレットPCが近い将来ハードの世界を変える可能性があると認識したのだろう。そのため同社は1月のConsumer Electronics Show(CES)でタブレットPCを推進してきた。1月6日の基調講演で、スティーブ・バルマーCEOはHewlett-Packard(HP)製のタブレットPCを披露した。Microsoftと提携するほかのメーカーも、同イベントでマルチタッチスクリーンを搭載したタブレットPCやタブレットに変形するノートPCを展示していた。
「携帯電話のように持ち運びができるが、Windows 7搭載PC並にパワフルだ」とバルマー氏はHP製タブレットPCを聴衆に向けて掲げながら説明した。「この新しいカテゴリーのPCは、タッチ機能と携帯性を生かすはずだ」。このHPデバイスはWebサーフィンや電子書籍の閲覧、マルチメディアコンテンツ再生ができ、2010年中にリリースされる予定だ。
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.
Special
PR