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“革命的Ustream放送”「激笑 裏マスメディア〜テレビ・新聞の過去〜」の裏側(1/2 ページ)

» 2010年03月23日 13時31分 公開
[三上洋,ITmedia]

 3月22日深夜から早朝にかけて、メディアの世界をひっくり返すネット生放送が行われた。インターネットの生放送サービス・Ustreamとニコニコ生放送を利用し、ネット・メディアの著名人が集結した討論番組だ。ピーク時で1万人以上が視聴し、トータルで14万ビューを突破するなど、今までの常識を打ち破るネット生放送となった。

3月24日16:30追記

初出で「14万人がみた」と表記しておりましたが、これは「トータル14万ビュー」の間違いです。Ustreamでの視聴数が、累計で14万ビューとなったもので、実際のユニーク視聴人数はこれより少なくなります。お詫びして訂正します。


NHKの放送記念日特番にぶつけた「ネット裏放送」

photo 「激笑 裏マスメディア〜テレビ・新聞の過去〜」の参加者。ネット・メディアの第一線を走る著名人が集結した

 この「激笑 裏マスメディア〜テレビ・新聞の過去〜」は、Ustreamでの生放送を1年ほど前から行っている「ケツダンポトフ」のそらのさんによる放送だ。Twitter+Ustreamの世界では日本でナンバーワンと言える存在で、裏側を含めた全てを放送する「ダダ漏れ」として、著名人インタビュー・イベント取材・発表会取材などを毎日行っている。

 今回の生放送には、ネットメディアの世界をリードする著名人ばかりが集まった。司会はメディアジャーナリストの津田大介氏、元ライブドア社長でのSNS株式会社ファウンダーの堀江貴文氏、ジャーナリストの上杉隆氏、オープンソース開発者でアルファブロガーの小飼弾氏、「切込隊長」としておなじみの山本一郎氏、そして飛び入りとしてドワンゴ会長の川上量生氏が参加。これだけ豪華な顔ぶれが集合するのはめったにないことだ。

 当初の内容はシンプルで、NHKの放送記念日特番として同日に放送された「激震 マスメディア 〜テレビ・新聞の未来〜」にツッコミを入れようというもの。ケツダンポトフ・そらのさんの放送では、以前に「朝までダダ漏れ討論会」として、「朝まで生テレビ」風の討論番組が田原総一朗・津田大介氏の司会で行われている。その時も7000人近くの視聴者があったが、今回の放送はさらに増えてピーク時で1万人以上、トータルで14万ユーザーが視聴。その時点ではUstream世界ナンバーワンの視聴者数となった。日本でのUstream放送では、歴代で1,2を争う規模となった。

2日前に発案、収録場所は小飼氏自宅で2時間前に決定

photo 放送は小飼禅氏の自宅から行われた。書評で有名な小飼宅の名物本棚が後ろに見える

 著名人が6人も集まった討論会だけに、準備や中継設備もさぞ大変なものと思うかもしれない。しかし実情は笑ってしまうほどの、ぶっつけ本番だ。アイデアが出たのはわずか2日前で、Twitterに出ていたNHK特番の広告に「これの対抗をやったら面白いかもね」というつぶやきから始まっている。上杉隆氏がタイトルを決め、参加者がフィックスしたのは前日だった。

 そして収録場所はギリギリまで二転三転し、最終的に小飼弾氏の自宅に決まったのは、なんと放送スタートの2時間前。小飼氏の自宅マンションのリビングルームから、トータル14万ビューを超えた放送ができてしまうのだから衝撃的だ。

 こんなぶっつけ技ができるのは、やはりTwitterの力が大きい。企画が出るのはTwitter、内容を固めるのもTwitter、集合場所を伝えるのもTwitter。リアルタイムウェブだからこそできる離れ業だと言えるだろう。

photo ケツダンポトフのそらの氏。たった一人で三脚・カメラ・PCを持ち込んで生放送を行う

 さらに驚くのは、この生放送を現場で行っているのは、そらのさんたった一人だということ。カメラ・PC・三脚などの収録セットを担いで現れ、そのまま一人で中継してしまう。ケツダンポトフを運営しているソラノートのオフィスではスタッフ1人がサポートしているものの、現場にはそらのさんしかいない。放送では他のスタッフがいるように見えたかもしれないが、あれは取材陣(といっても筆者を入れて二人のみ)が雑用を手伝っている状態だ。

放送禁止用語炸裂のフリーダム放送

photo ジャーナリストの上杉隆氏

 第1部は午後9時30分からスタートし、NHKの特番にツッコミを入れていく。討論の内容をもとにするのだが、残念ながらNHKの映像・音声は流すことができない。そこで出演者がイヤホンで聞きながらのトークとなった。

 ここの内容は、ぶっちゃけて言ってしまうと「飲み会」だ。テレビを見ながらのトークなので断片的だし、基本的にはツッコミとなるためだ。上杉隆氏が「記者会見を開放しないのがメディアの構造自体に悪影響を及ぼしている」と真面目に言うそばから、山本氏が「○○!」と不穏当な発言をしたり、小飼氏が「○○○!」とテレビでの放送禁止用語を連発してしまう。これで放送が成り立ってしまうのもUstreamの面白さだろう。

photo 切込隊長こと山本一郎氏

 グダグダな流れでも臨場感は伝わるし、メンバーがメンバーだけにちょっとした一言でも面白さがある。この時点で視聴者が7000人を突破し、用意されたハッシュタグへの書き込みが多すぎて、現場ではTwitterを追えない状況となった。

 NHKの放送終了後は第2部として、参加メンバーが討論する形となった。ただしこれも台本は一切ない。第2部をすること自体も、司会の津田氏が「これNHKの放送中は収拾がつかないから、放送終わってからちゃんと討論をやろう」と放送中に言って決まったもの。なんともフリーダムな放送だが、それでも成り立ってしまうのは、裏側をすべて見せる「ダダ漏れ」というコンセプトと、司会の津田氏の仕切りがうまいからだ。

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