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ヤマハ純正VOCALOID「VY1」をほかの女声VOCALOIDと比較してみた(1/3 ページ)

» 2010年08月31日 14時50分 公開
[松尾公也,ITmedia]
画像 VY1のパッケージ

 ヤマハの「純正」なVOCALOID、「VY1」が9月1日に登場する。日本女性を思わせる「MIZKI」という開発コードネームがつけられたこの女声VOCALOIDに関わった開発チームへの取材に同席したが、彼らはこのプロジェクトに相当の愛着と自信を持っているように見受けられた。

 一方で、VOCALOIDは日本人の女声に限っても既にMEIKO(2004年)、初音ミク、鏡音リン(2007年)、巡音ルカ、メグッポイド、SF-A2 開発コード miki、歌愛ユキ(09年)が既にリリースされている。同一歌手ではあるが声色が違う、初音ミクAppendのSoft、Sweet、Dark、Light、Vivid、Solidの6種類を加えれば、13種類。24日にデビューしたてのLilyを含めれば14種類の女声VOCALOIDをユーザーは利用できるという状況がある。

 そこに投入される15番目の女声VOCALOID「VY1」。それなりの品質と違いがなければユーザーは納得しないだろう。

 ITmediaではVY1のβ版を入手し、試用することができた。既存の女声VOCALOID 2音源と比較してその特徴を探ってみた。たくさんある女声ボカロの中に、VY1の居場所はあるのか?

日本語女声VOCALOIDをおさらいしてみる

 その前に、現在販売・公開されているVOCALOID音源とその特徴について簡単に説明しておこう。

初音ミク:「ミクは奇跡」と呼ばれるほど、絶妙なバランスで構築されている。中高音に強いが、低音でもそれなりに鳴る。少し鼻にかかった、あっけらかんとした歌声。母音の遷移が少しだけ不安定になるところもあるが、エディタ(VOCALOID Editor)で音符(ノート)を置き、歌詞を入れていけば自然な歌声になる。Appendでさらに6つの声色が加わり、両方を組み合わせれば、ささやき、暗い声からハキハキまでバリエーションを持たせることが可能。

鏡音リン:14歳という年齢に似合う、鼻にかかったハイトーン。広域のロングトーンでも力強いパワーボイス。初期バージョンではバランスに問題があったが現在発売されているAct.2では修正。歌詞が聞き取りにくい、特定の子音が聴き取りづらいといった問題は指摘されるがそれもまた魅力となっている。少年版の鏡音レンも同梱。現在、初音ミクと同じくAppendによるバリエーションを収録中。レンもAppend化予定。

巡音ルカ:ハスキーボイスで低域でも十分な音量を出せる。高音部では細い歌声になる。発音の特徴としては、減衰が速い点が挙げられる。日本語と英語の両方のDBを備えた唯一のVOCALOID。

メグッポイド:ランカ・リーの声優・歌手として知られる中島愛の声質を転写したとも言える、ハスキーがかった、少女っぽいセクシーボイス。音の立ち上がりはゆるい感じがあり、苦手な子音もあるが、そこを理解した上で調声すると人間と見まごう。ゆったりめのバラードが特に似合う。

SF-A2 開発コード miki:DBの元の声であるフルカワミキの特徴をとらえた、絞ったような独特な声質。高音と低音で声の印象がまるで違う。高音が若干ピッチがうわずる。汎用性はちょっと薄いか。

歌愛ユキ:「夏休みで遊びすぎたせいで普段よりも声が枯れてる」という内部情報も信憑性がありそうなリアル小学生ボイス。母音が若干不明瞭で声がハスキーなため、元気な小学生の歌、というよりは、暗めの曲、アンニュイな曲に特に似合う。

Lily:中低域に強い、バランスのとれた声。GENパラメータを上げることで、ハイトーンの男声ボイスの代替となる可能性もある。ちょっとハスキー気味なのでロックボイスとしてうまく利用できそうだ。発売日は8月24日。VY1発売の1週間前。ちょっとお姉さんになる。

試してみた

 開発陣から「VY1」のβ版をお借りして実際に使ってみた。まずは和風の静かな曲から。

 同じオケ、VSQで初音ミクAppend Softを使ったもの。

 同じくメグッポイド。

 そして、Lily体験版。製品版でも試したが、違いは聴き取れなかった。

 声の特徴がお分かりいただけただろうか? 伸びやかでバランスのとれた声質。初音ミクほど鼻にかかっておらず、メグッポイドやLilyほど枯れてはいない。母音の発音もしっかりしているのが分かる。

 もう1つ、滑舌にも自信ありということなので、速いパッセージを試させてもらった。

 同じものを、滑舌のよい初音ミクAppend Lightでやったもの。

 Lily版はこちら。

 いろいろなVOCALOIDを使ってVOCALOID Editorをいじっていると、ところどころ再生するときにノイズが入ってしまうことがある。特に、ノートを間隔を置かずに配置したり、音程を極端に上下したり、短いノートを直前に置いたりしたときにはノイズが発生しやすい。

 VY1の場合にはそのようなケースが少なかった。母音が明瞭に発音され、早口で歌わせた場合にもロボっぽくは感じない。ただ、ちょっとミクっぽい印象は受ける。

さらに試してみた

 次に、より詳しくそれぞれのVOCALOIDの特徴を探るため、同じVSQデータ(MIDIデータをVOCALOID専用に拡張したもの)で比較してみた。

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