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ヤマハ純正VOCALOID「VY1」をほかの女声VOCALOIDと比較してみた(3/3 ページ)

» 2010年08月31日 14時50分 公開
[松尾公也,ITmedia]
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 しかし、Appendによる声のバリエーションを考えれば当然ながら初音ミクに利があるし、クリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉氏は、鏡音リン・レン、巡音ルカもAppend化予定。さらにはVOCALOID 1エンジンのMEIKOまでエンジンを載せ換えるという。一方、ヤマハもVY1の声色バリエーションがありうることを取材時に示唆していた。

 ヤマハとしては「老若男女をそろえたい」と言っているが、VY1で採用した声優の声は非常に気に入っているようすで、Append的な音色バリエーション展開も考えられるだろう。男声VOCALOIDの需要があることも認識しているようだ。

 サードパーティーの歌声DBがこれだけある状態でヤマハが敢えて自社ブランドで出すメリットとしては、ライセンス料がかからない分、安く提供できることが挙げられる。パッケージを簡素化し、キャラを取り去り、ネット販売に専念することでさらに低価格に入手できるようになる。実際、VY1の価格は安い。

 「アニメ絵があると買いにくい」から型番だけで出す、というメリットもある、という意見もあるが、現時点ではそれはない。通販しかオプションがないからだ。

 それよりも、「ヤマハが自由に使える、ポピュラーな音源を確保しておく」ことのほうが大きいのではないか。

 NetVOCALOID、Netぼかりす、VOCALOID-flex……これらはヤマハがこのところ打ち出してきた歌声音声系の新技術で、いずれもなにがしかのVOCALOIDデータベースを必要とする。クラウド型VSTを含め、今後もVOCALOIDを活用したサービスは登場してくるはずだ。しかし、そのときに「自由に使える音源」があるのとないのではサービスインまでのスピードに大きな差が出てしまう。

 VOCALOIDを使うサービス、製品を思いついたらとりあえず自社音源だけでも出してしまう、そんなことがこれからは可能になる。

 VY1には、ヤマハが大ヒットを飛ばした電子楽器、QY、SYと同じ特徴的なフォントデザインが使われている。ヤマハのデザイン研究所が起こしたものだ。SYは使っていなかったが、VHSカセット大のポータブルな音源付きシーケンサーであるQY-20は使っていた。

 ここからは妄想だが、しばらく新製品の出ていない、このQYシリーズにハードウェア化されたVOCALOIDが組み込まれるようなことがあれば、それはVY1音源がふさわしいだろう。初音ミクをはじめとする音源がカートリッジで追加できるとなおいい。

 VY1が存在することでヤマハの製品開発が解き放たれる部分は確かにある。実はその一部をチラ見したのだが、それはまた別の話。

 既存VOCALOIDのAppend化を進めるクリプトン。ガチャッポイド、サンリオとキャラクター路線を押し広げるインターネットとAHS、そしてキャラ設定をあえてなくしたヤマハ。

 今日8月31日は初音ミク生誕3周年。明日の9月1日はVY1誕生日。それぞれ魅力的な声がVOCALOIDには満ちている。ぜひ自分の耳で確かめて、パートナーとなる声を選んでほしい。

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