ITmedia NEWS > ネットの話題 >

VOCALOIDの可能性、DTMの“外”にも――ヤマハに聞く「NetVOCALOID」

» 2009年04月20日 07時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 あの「VOCALOID」が携帯電話でも――ヤマハが4月7日に公開した「NetVOCALOID」は、サーバ上のVOCALOIDをユーザー端末から操作し、歌わせることができるSaaS型サービスだ。第1弾として携帯電話で「初音ミク」や「がくっぽいど」を利用できるサイトがオープン。予想より多くのユーザーが利用しているという。

画像 NetVOCALOIDサービスのイメージ

 VOCALOIDは、ヤマハが2003年に開発した音声合成ソフトで、人間の声を元にリアルな歌声の合成音を作成できる。Windows専用で、ある程度高いPCスペックを必要とすることもあり、これまではDTMという専門分野の単体パッケージソフトとして展開してきた。

 だが、VOCALOIDを使ったクリプトン・フューチャー・メディア製DTMソフト「初音ミク」がヒットし、DTMの世界を大きくはみ出す形で人気が拡大。音楽制作に興味がない人や、PCを持っていない人からも「VOCALOIDを使ってみたい」という意見が寄せられていたという。

 「初音ミクファンの大部分が、ソフトに触ったことがないだろう。ミクが楽器だと知らない人もいる」と、同社サウンドテクノロジー開発センターY2プロジェクトの木村義一主任は話す。初音ミクの実売価格は1万4000円前後。「ちょっと触ってみたいが、パッケージソフトは高すぎて手が出ない」という声も多かったという。

 同社では、VOCALOID人気が高まったちょうど同じころ、「Y2プロジェクト」が始動。同社が開発中のソフトウェア技術のビジネス化を推進するプロジェクトで、第1弾として、音楽ソフトの機能をサーバに実装し、アプリケーションプロバイダーに活用してもらうSaaS型サービスの立ち上げを検討していた。

 プロジェクトで最初のサービスに選ばれたのがNetVOCALOIDだ。音声合成など重い処理をすべて同社のサーバで行うことで、VOCALOIDを携帯電話やゲーム機など非力な端末でも利用できる。アプリケーションプロバイダ側で機能を限定したり、ユーザーインタフェースを自由に作ることも可能だ。

 まず携帯電話向けでサービスを始めたのは、課金が容易という理由に加え、「10代のVOCALOIDファンはそもそもPCを持っていない」という背景があった。「ニコニコ動画を携帯電話で見て、VOCALOIDを知るユーザーもいるだろう」(木村主任)――携帯サイトでサービスを提供すれば、そんなユーザーにもリーチできると考えた。

 第1弾として、初音ミクの開発元・クリプトン・フューチャー・メディアと、「がくっぽいど」開発元のインターネットがサービスをスタート。入力した歌詞にメロディーを付けてミクの声で再生できる「ミクと歌おう♪」と、入力した文字をがくっぽいどが川柳やラップ風に読み上げる「ケータイがくっぽいど」が始まった。

 それぞれ有料サービスで、利用者数は非公開だが、予想以上に多くのユーザー登録があったという。「ミクと歌おう♪で合成した音声をニコニコ動画にアップしているユーザーがいたことに驚いた」と木村主任は話す。

画像 木村主任(左)と大島技師補

 NetVOCALOIDの応用範囲は携帯電話だけではない。PCやゲーム機、ロボットなど、ネットにつながる端末ならどんなものでもOKだ。FlashインタフェースでVOCALOIDを使えるWebアプリや、毎日違う歌を歌えるネット対応目覚まし時計、有名人の声で話しかけてくるぬいぐるみ、歌うシンセサイザー、歌うロボット、歌うカーナビ……使い方はアイデア次第。木村さんは特に「ロボットやカーナビなど組み込み型をやってみたい」という。

 Y2プロジェクトのメンバーはたった6人。独自のサービス展開は難しく、外部との協力が不可欠だ。「われわれは全方位外交。つねに門戸を開いているので、『こういうふうに使いたい』というアイデアがあればどん持ち込んでほしい」と、同社サウンドテクノロジー開発センターY2プロジェクトの大島治技師補は話す。

 「VOCALOIDを使って驚くようなサービスを作ったり、社会貢献できたりするのが理想。すぐにお金にしたいというのではなく、まずは技術の可能性を追求し、最終的にビジネスにつながれば」(大島技師補)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.