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在宅勤務制度の導入、まずはトライアルで始めよう 日本HPの先行事例に学ぶテレワークは日本企業を強くする!(1/3 ページ)

» 2011年07月29日 08時00分 公開
[五味明子,ITmedia]

 いよいよ夏本番。だが例年と違うのは、首都圏近郊のオフィスはどこもかしこも暑いということ。いや、オフィスだけではない。電車の中もカフェもレストランも、自宅すらも冷房の温度設定が高めになっている。理由はもちろん、節電のため、だ。

 経済産業省は7月1日、東京電力および東北電力管内の事業者や家庭を対象に、15%の電力需要抑制を開始した。今夏はすべての企業が節電に取り組んでいるわけだが、中には節電対策に目を奪われるあまり、実業の生産性が低下している企業も見られるという。

 そうした中、節電に対する対策として、今、在宅勤務の導入がクローズアップされ始めている。

 一昔前、在宅勤務は育児/介護中の(主に)女性従業員が一時的に利用する制度、と見られがちだった。今でも「仕事はオフィスで行うもの」という考え方は日本企業の間で根強く存在する。だが一方で、「3.11」以前から在宅勤務制度をうまく活用してきたことで、震災直後もすみやかに業務を復旧し、この夏もその生産性を低下させず、課せられた節電目標を下回ることなく乗り切ろうとしている企業がある。それが日本ヒューレット・パッカード(日本HP)だ。

 今回、日本HP 人事統括本部 人事企画・コミュニケーション本部 高橋健氏に、同社の在宅勤務制度のベースとなっている「フレックスワークプレイス制度」について、詳しく話を伺う機会を得た。在宅勤務制度の導入を検討している日本企業にとって、参考となる部分が多々あるはずだ。

時代とニーズにあわせて変える在宅勤務制度

 日本HPは2007年11月から全社員を対象にフレックスワークプレイス制度を実施している。これは、「月に3〜4日程度の割合で、直属の上司の許可を事前に得た場合に限り、自宅での勤務を認める」というもの。ただし震災後の2011年5月1日からは「週2日/月8日」に適用範囲を拡大している。社員の福利厚生のためというよりも、「在宅勤務の導入が生産性向上につながる」という判断がなされたからである。

日本HP 人事統括本部 人事企画・コミュニケーション本部の高橋健氏 日本HP 人事統括本部 人事企画・コミュニケーション本部の高橋健氏

 そして今夏、同社は日本経団連の節電方針を支持する旨を発表、昨年度ピーク比25%減の消費電力量を実現するため、6月から9月末までの期間を節電期間と定め、この期間内に限りフレックスワークプレイス制度の制限回数を解除、完全在宅勤務の運用を行っている。対象となるのは大島本社と八王子事業所、昭島事業所に勤務する約5000人の全従業員だ。なお、業務上、オフィス勤務がどうしても必要となる社員はこれに含まれない。

 「フレックスワークプレイス制度では、原則、勤務場所は自宅かまたは大島本社/八王子事業所に限定されていますが、節電期間中はこれに限らず、すべての日本HPオフィス、帰省先の実家や親戚宅、旅行先のホテルなど、セキュリティ上、安全を確保した上での勤務を認めています」と高橋氏。元々、生産性および効率性の向上を目的として始まった制度だが、今回、それに加えて節電という新たな目標が加わったため、適用範囲を大幅に拡大することになった。このように、時代や社会の変化に応じて、制度そのものも柔軟に変更できるようにしておくことが、在宅勤務制度を運用していく上では重要なポイントになる。

「丸一日でなくとも、例えば午前中はお客様のところに行き、午後に自宅で業務を行う、という形態でもOKです。どのように運用するかは現場のチーム長の判断に任せています」(高橋氏)

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