大阪・道頓堀にある有名な「かに道楽」の巨大看板。鮮やかな色と動く足が通りすがりの人々をお店に招き入れているように見える。団地や高速道路のジャンクションなどマニアックなものを紹介するライターの大山顕さんはこのような看板を「共食いキャラ」と呼んでいる。字面の意味通り、同類を食べる動物キャラクターということである。(早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース 郭キン)
この記事は早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコースの「ニューズルームJ」の受講生が執筆しています。ニューズルームJは、ブログ「ガ島通信」を執筆するジャーナリストの藤代裕之氏の指導により、日本で初めてインターネットを活用したライティングを学んでいます。
道頓堀では巨大なタコの立体看板も目立っている。大阪を代表する食文化“粉もん”の魅力を観光客に紹介する道頓堀コナモンミュージアムの看板だ。ホームページによると、上海万博期間には看板が上海にまで出張し、タコ焼きという日本特有な食文化を世界に紹介した。巨大なタコは、1個のタコ焼きを持っている。まさに共食いである。
共食いキャラは店舗以外でも幅広く使われている。財団法人「日本食肉消費総合センター」のWebサイト。「総合的見地から、国民に対し食肉に関する知識の普及及び情報の提供、食肉の流通・消費に関する調査研究等の様々な事業を実施しています」と説明されているこの団体のサイトでは、日本でもっとも消費されている3種類のお肉──豚、鳥、牛の可愛いキャラクターがサイトの隅から隅まで使われており、3匹が仲良く「私たちは食肉についての正しい情報をお伝えいたします」と一番目立つところで言っている。おかしいと思わないだろうか。同類の仲間の誰かがすぐ料理にされちゃうところなのに、よくも平気で宣伝できるとは……恐るべし、完全な共食いサイトである。
大山顕さんは日本の数少ない共食いキャラ研究の専門家の1人である。「共食いキャラクター」というWebサイトを運営、2009年にはその名も「共食いキャラの本」(洋泉社)を愛好家たちの協力で出版した。
数年前にふと共食いキャラの存在を意識するようになり、それ以来その姿を見つけるたびに写真を撮ってきた。共食いキャラについて「彼らは好きこのんでこんな仕事をしているわけではない」「我々人間がいったい彼らにどんなことをやらせてしまっているのか」という若干批判的な意見を持っているようだ。本の中では、豚、牛、鶏、魚介、タコなど動物別に共食いキャラを分類して1つずつ紹介。特に豚は共食いキャラ界の王者として、97例が紹介されている。
マスコミも共食いキャラを取り上げたことがある。道頓堀コナモンミュージアムの巨大なタコの立体看板が「上海万博」のパビリオンに掲げられ、さらに目立つように改造が行われて3月に神戸港から上海に向けて出発した際、多言語版の動画ニュース「NHK WORLD」で公開された。共食いキャラの一番の大活躍だった。
ネットでも「デイリーポータルZ」は共食いキャラクターをたびたび取り上げている(「共食いキャラクターを鑑賞する」「共食いキャラ・ブタさんスペシャル」。
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