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日本は放射能まみれ? 世界の「誤解」をなくしたい――Q&Aサイト老舗「OKWave」のいま(1/2 ページ)

» 2011年11月15日 07時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

 「日本は今、世界の人々から誤解を受けている」――こう話すのは、Q&Aサイト「OKWave」を運営するオウケイウェイヴの兼元謙任社長。「オーストラリアに留学中の息子は、ホームステイ先の家族にこう言われている。『日本は放射能に汚染されていて危険極まりないというのに、なぜ帰るんだ?』と」

 東日本大震災の発生以降、国内外のメディアによって被災地の光景が連日報道された。だが兼元社長によると、海外メディアは震災直後の「大変な光景」ばかりを報道し、その後の復興などに関してはほとんど触れることなく「ぷっつりと報道が止まってしまった」という。

photo 兼元謙任社長

 「震災後、海外のテレビでは東北の街が津波に流される映像や東京電力・福島第1原子力発電所が水素爆発を起こす映像などでもちきりだったものの、あるとき突然日常のニュースに戻ってしまった。おそらく復興に向けた光景などは、海外メディアにとってそれほど興味の対象ではないのだと思う」と兼元社長。これにより、海外ではいまだに「日本は非常に危険」という誤解を持っている人も少なくないという。

 こうした国際的な誤解は、震災後の日本だけの問題にとどまらない。例えば「日本には、特定の国の人に対して国籍だけでネガティブなイメージを持つ人も少なくない」と兼元社長は言う。こうした誤解を解きほぐしたい、各国のポジティブな情報をもっと世界中で共有したい――そんな思いで同社が運営しているのが、多言語Q&Aサイト「ARIGATO」だ。

世界の「相互不理解」を解きほぐすARIGATO

photo ARIGATO

 ARIGATOは、日本語や英語など20カ国語に対応し、200カ国に向けて展開しているというソーシャルQ&Aサイト。2010年10月にFacebookアプリとしてβ版の提供が始まり、今年6月からは独自サイトとして運営している。

 サイト上にはマウスドラッグで動かせる世界地図が大きく表示され、ユーザーの投稿を示す吹き出しが各地に表示されている。ユーザーはFacebookやTwitterのアカウントでログインすれば、自国の言語でどこかの国に向けて質問したり、他のユーザーの質問に対して自国の言語で回答したりできる。

 Q&Aの翻訳は、Google翻訳と“人力”の組み合わせによって行われているという。サイト上の未翻訳のQ&Aは誰でも翻訳でき、Google翻訳によるアシスト機能も用意されている。「複数の言語が分かるユーザーや、当社でインターンシップとして働いている20人の留学生に翻訳してもらっている。各国の人々に協力してもらうことで成り立つシステム。たどたどしい翻訳でも、意味が分かるだけで価値がある」(兼元社長)

photo 「earthquake」トピックの投稿

 地域ごとにQ&Aのトピックが用意されており、日本には「旅行」「アニメ」などのほか、「earthquake」というトピックも。同トピック上では「大震災があってから、日本にいらっしゃる皆さんの生活はどう過ごされていますか」「日本、東北の被災者たちのために寄付したいのですが、どこに寄付すれば最も効果的でしょうか」といったQ&Aが寄せられている。

 投稿された質問や回答に対しては「ARIGATOボタン」を押せるようになっており、ボタンのカウントは11月10日現在で7800回ほど。「規模はまだまだこれからだが、世界中の“相互不理解”をなくし、日本や外国の人々を『ARIGATO』という言葉でつなげたい」――兼元社長は同サービスに込めた思いをこう話す。

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