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日本は放射能まみれ? 世界の「誤解」をなくしたい――Q&Aサイト老舗「OKWave」のいま(2/2 ページ)

» 2011年11月15日 07時00分 公開
[本宮学,ITmedia]
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ご当地情報を聞ける楽しみも

 世界中の“現地の声”を聞けるのもARIGATOの特徴だ。サイト上では「バルセロナ旅行準備中です!裏グルメのいい所を知ってる人教えてくれない?」「ドイツで行われている『Connichi』というアニメフェスに行ってみたいです。行ったことがある方、どんな雰囲気か教えてください!」など、その地域に住んでいる人でないと分からない情報を求めるQ&Aがさまざまな言語で多数公開されている。

 他国の人々に質問できるだけでなく、「その国の人々が質問し合っているのを見る楽しみ」もあるという。「例えば『京都に行ったらお土産は何がいいか』といった日本人同士のやり取りは、日本に旅行したい外国の人々にとっても意味がある。同様に、世界には面白いのに埋もれている情報がたくさんある」(兼元社長)

 また今後、ARIGATOとOKWaveのデータベースを連携させ、OKWaveの約2000万件のQ&Aを世界に向けて公開していく計画もあるという。それらのQ&Aの翻訳も「Google翻訳+人力」で行う予定だが、「ソーシャルの力で意外と早く翻訳されるのでは」と兼元社長は期待する。

「本当にやりたかったことをようやく始められた」

 同社がQ&Aサイト「OKWave」(当初の名称は「OKWebコミュニティ」)を開設したのは2000年1月のこと。それから11年以上が経過した今、「本当にやりたかったことをようやく始められた」と兼元社長は話す。

 「自分はもともと韓国籍だったが、日本に帰化する前はいろいろあった」と兼元社長。当時の日本の状況は現在のような“韓流ブーム”とはほど遠く、在日韓国人に対するさまざまな差別や偏見があったという。そんな中、世界中の人々と瞬時につながれるインターネットが登場したことを受け、「世界中の人々がネットでお互いに質疑応答を繰り返せば、さまざまな誤解が次第に解かれていくのではないか」と思うようになったという。

 「本当だったらその時に世界に向けたQ&Aサイトを始めたかった。だが、当時はネットワークの整備も未熟で、ましてや多言語翻訳などはるか先の未来の出来事だと思っていた」(兼元社長)

photo 東京オフィス内には各国の国旗が。「世界中の人々をつなぐという目標を“見える化”したい」と兼元社長は言う。

 それが今、ネットワーク環境の向上やGoogle翻訳の登場などに加え、ソーシャルメディアの世界的な普及もARIGATOの後押しになっているという。「ARIGATOでは、FacebookやTwitterのアカウントで簡単にログインできるようになっている。ソーシャルメディアの普及によってQ&Aサイトの利用者が減ったということはなく、むしろユーザーが回答などをソーシャルメディア上にシェアすることで、良い循環ができている」と兼元社長は話す。

 ARIGATOの主な収益源は、パートナー企業とのタイアップ広告やAPIの有償提供だ。9月からは松竹との協業でアニメ「テニスの王子様」のタイアップ企画を実施したほか、楽天にAPIを提供し、「楽天トラベル」のFacebookページ内で連携企画を実施している。収益規模としては「まだまだこれから」だが、今後ユーザー数が増えればバナー広告の掲載なども検討していくという。

 「ARIGATOでは、世界に向けてサービスや商品を売りたい企業を相手にビジネスができる。今はまだまだ小規模だが、腰を落ち着けて成長させていきたい。OKWaveもオープンから黒字化までに3年かかったが、当時との違いはQ&Aサイトの仕組み自体が既に社会的に認知されていること。海外でもQuoraをはじめとするQ&Aサイトが広く認知されているので、それらと“何が違うのか”をはっきり示せば、ARIGATOの黒字化にはそれほど時間はかからないと考えている」(兼元社長)

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