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IBM、量子コンピュータ実現に向けて新たな一歩

» 2012年02月29日 14時51分 公開
[佐藤由紀子,ITmedia]

 米IBMのIBM Researchは2月28日(現地時間)、量子コンピュータ実現に向けた大きな進展があったと発表した。「デコヒーレンス時間」の延長と計算でのエラー削減で新記録を達成したという。

 量子コンピュータ(基本的な概念はこちらを参照のこと)は、従来のスーパーコンピュータより飛躍的な計算能力を獲得できるが、主にデコヒーレンス問題によって実現が難しいとされている。量子(電子や光子)の性格上、計算に必要な「量子重ねあい」の状態は外部からの干渉で簡単に破壊されてしまい(この現象をデコヒーレンスと呼ぶ)、維持するのが難しいからだ。量子重ねあいの状態維持時間(=デコヒーレンス時間)が短いと、処理時間がかかる高度な計算はできないことになる。

 IBMは「3次元超電導量子ビット」を用いることで、「デコヒーレンス時間」を最長100マイクロ秒まで伸ばすことに成功したという。これは、これまで報告されているデコヒーレンス時間の2〜4倍に当たる。実験に使われたのは、幅が約38ミリの容器の空洞に設置したサファイア片に載せられた量子ビット。IBMの研究者らは、将来的にはこうしたシステムを数万の量子ビットにスケールアップできるとみている。

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 これとは別に、3つの量子を載せたシリコンチップを製作し、量子コンピュータシステムの基本演算である制御NOT演算を実施したところ、95%の成功率を達成できたという。

 2dqubit

 同社研究者のジョン・ガンベッタ氏はこの成果を紹介する動画で「量子コンピュータの実現にはあと50年かかると言われているが、われわれは10〜15年で実現できるだろう」と語った。


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