VOCALOID3が正式発表されたとき同時にアナウンスされていた韓国製VOCALOID音源「SeeU」が、昨年暮れに発売された。韓国語(朝鮮語)と日本語の2つの言語で歌うことが可能なVOCALOIDだ。最近のK-POP隆盛から、「ボカロでも日本市場を狙っている」とうがった見方をする向きもあるが、実際のところどうなのか、SeeUの企画担当者に聞いてみた。
インタビューに応じてくれたのは、韓国の3大放送局の1つ、SBSのグループ企業であるSBS Artechのアートディレクターで、韓国語VOCALOIDの責任者となっているキム・ジェジュンさん。そして、SBS ArtechといっしょにVOCALOIDの音楽面でのサポートをしているBig Hit Entertainment(BHE)で戦略企画理事のユン・ソッグジュンさん。SBS Artechで日本向けのマーケティングを行い、SeeU Libraryのデータベース開発も担当している、キム・ヒョウンさんは取材の通訳もこなしてくれた。
このVOCALOIDプロジェクトの推進役となっているキム・ジェジュンさんとVOCALOIDとの出会いは2009年ごろ。まだ中学1年生だった息子さんがVOCALOID好きで、その影響で関心をもって聞き始めた。
当時12歳の息子さんは、VOCALOID楽曲の中ではryoの「メルト」が特にお気に入り。日本のアニメ、カルチャーが好きで、それが講じて自分から日本語の勉強をしたり、ピアノの練習を始めたりしているという。
「そのときには自分が事業としてやるとは思ってなかった。ファンではあったんですが」とジェジュンさん。ビジネスに発展するきっかけとなったのは友人との会話。ソッグジュンさんと食事をしているときに、好きな音楽は何か、と話をしていて、「VOCALOIDというのがあるけど知ってる?」と。「いっしょにやってみようか」
ジェジュンさんはVOCALOID企画を社内で提案。BHEといっしょにやることになった。BHEは、ビ(Rain)、2AMなど人気アーティストのヒット曲を作り、プロデュースする作曲家"hitman bang"ことバン・シヒョクさんが代表を務める音楽プロダクション。SeeUのデモソングの1つである「Never Let You Go」も"hitman bang"の作品だ(オリジナルは2AM)。彼は新しい音楽市場に興味を持っており、日韓の音楽的な交流にも熱心だという。
VOCALOIDに関する下調べをした後、2010年夏にヤマハとコンタクト。「VOCALOIDの父」剣持秀紀さんが技術概要を説明した。データベースの開発は2011年2月からとなった。その理由は韓国語のレコーディングスクリプトだ。
レコーディングスクリプトとは、VOCALOIDの音声データベース収録に使われる音素を組み合わせて収録する方法。母音、子音の組み合わせを網羅するように作成されており、どのような組み合わせになっているかは、ヤマハの機密情報となっている。韓国語版のスクリプトはこの時点で出来ておらず、そのスクリプトを開発したのは、ヒョウンさんなのだ。
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