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年内1000万ユーザー獲得へ 「実名×クローズド」に賭けるDeNA「comm」の勝算(1/2 ページ)

» 2012年12月07日 10時22分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 ディー・エヌ・エー(DeNA)が10月23日に公開したスマートフォン向け無料通話・メッセージアプリ「comm」が、開発陣も驚くペースで成長している。公開初日にApp Storeで無料総合ランキング1位を獲得。その1週間後には、Google Playの新着アプリランキングで1位を取った。ユーザー数は非公開だが、すでに100万は超えているという。

 来年半ばまでに1000万ユーザーを目指すとしていた当初の目標は大幅に前倒し。年内1000万人という新たな目標に向かい、プロモーションや機能改善を急ぐ。「日本中、世界中の誰もが使うサービスにしたい」と、同社のcomm戦略室室長・山敷守さん(25)は意気込む。

「ゼロから作り、莫大なユーザーを」 入社1年目が発案

 commは、無料通話とテキストメッセージングが利用できるスマートフォンアプリ。機能は「LINE」や「カカオトーク」など既存のヒットアプリとほぼ同じだが、無料通話の音質を追求したことと、実名での利用を前提にしている点が特徴だ。

画像 comm戦略室室長の山敷守さん(左)と発案者でエンジニアの長田さん

 発案者は、当時入社1年目だった、2009年未踏スーパークリエイターの長田一登さん(28)。Mobageの開発を担当していたが、「ゲーム以外で何か新しいことをやらないと、2014年度に売上高4000億円という全社目標は達成できない。新しいものをゼロから作りたい」と、新サービス案を練っていた。

 仮想人格でやり取りするコミュニティーや、特定の領域に的を絞ったSNSなども検討したが、ターゲットが狭く、大規模な成長が見込めないと判断。「莫大なユーザー数を獲得しようと考えていた」という長田さんは、スマートフォンの普及に伴い、誰もが利用するようになると予想されるメッセージング・無料通話アプリに照準を絞った。

 この分野は、LINEやViber、カカオトーク、Skypeなど数千万〜億単位のユーザーをかかえる競合がひしめき、市場が過熱しているが、どのアプリのユーザーも、無料通話の音質に不満を持っていると判明。そこに“付け入る隙”を見いだし、最高音質のアプリを目指すことにした。

 長田さんは、音声処理技術は素人。独学で学びながら、社内のサポートを得て開発を始めたという。本格的な開発は、4月ごろにエンジニア4人でスタート。5月からはデザイナーなどグラフィックス担当も参加し、「Yahoo!モバゲー」立ち上げなどの実績を買われた新卒3年目の山敷さんもリーダーとして加わり、戦略を詰めていった。

「つながり」を維持するための「実名」

 commのコンセプトは「実名」かつ「クローズド」だ。LINEやSkype、Viberは、IDを使った匿名または半匿名で、クローズドなコミュニケーションが行える。Facebookは実名だが、話題をシェアするなどオープンな交流が可能。実名とクローズドを組み合わせたサービスは他になく、独自の強みを発揮できると判断した。

 実名にこだわったのは、ソーシャルグラフを更新し続けてもらうためという。ニックネームなど実名以外のIDを利用すると、友達を追加する際「このサービスのIDを教えて」と相手に聞く必要があり、つながる前にひと手間かかる。進学や転職など数十人単位で新たなつながりができるタイミングで、新たな友人全員にIDを聞くのは手間が大きい。実名でつながる仕組みなら、相手の名前さえ分かれば検索するだけで簡単につながることができ、手軽にソーシャルグラフを更新してもらえると判断した。

 ただ、実名登録に不安を覚えるユーザーも少なくないため、細かなプライバシー設定ができるよう配慮した。自分の実名を検索対象から外せる設定や、着信を友人のみに制限する設定が可能。「Facebookが当たり前のスマートフォンネイティブ世代は、実名に抵抗がなくなってきている」と山敷さんは感じており、実名でサービスを使う文化を醸成していきたいという。

 「クローズドコミュニケーションで求められるものすべてを、1つのアプリで提供したい」と、メッセージング、スタンプ、アクティビティ、写真共有など多彩な機能を整備した。スタンプはテストマーケティングを行い、人気のデザインのものだけを提供。無料スタンプは年内に1000種類に増やす計画だ。

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