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電子書籍で世界がもっと楽しくなる方法を考えよう 「売れる・売れない」を超える「第三極」のために部屋とディスプレイとわたし(2/5 ページ)

» 2012年12月21日 16時00分 公開
[堀田純司,ITmedia]

 「不況が長引く」がもはや冠言葉になって久しい出版の世界ですが、その現場ではなにが起こっているのでしょうか。一言でいうと「売れ筋への集中と、商品寿命の短サイクル化」。他の小売分野で見られる潮流と、まったく同じ現象です。

 たとえば、出版科学研究所のデータによると、2011年には100万部以上のベストセラーがなんと10タイトルも出ました。いい話なのですが、ではそれが書籍の販売金額を押し上げたかというと、この年の取次ルートを経由した書籍全体の販売金額は0.2%の微減。拡大していません。全体は縮んでいるのにベストセラーは出る。つまりこれは書籍市場で「売れるものは売れるが、売れないものはますます売れなくなった」という二極化が進行していることを示しています。自慢ではありませんが、私などはこの売れない組の王者です。

 一方、雑誌は14年連続で現象し、この2011年にはじめて販売金額が1兆円を割り込んでしまいました。

 ちなみに2012年は逆にベストセラーがあまり出なかった年となりました。多様性が回復しているのであればまだいいのですが、もしかするともはや本格的に市場がシュリンクしているのではないか、という不安も感じます。

「本当に好きでやっているような人が残る」

 では現状、日本の電子書籍のほうはどうかというと、きっちり紙の事情を反映していると言えます。むしろより激しいかもしれません。

 リアルの書店とくらべて、電子書店の売り場は「ディスプレイの表示領域の中だけ」と限られている。はじまったばかりの電子書店もまた、売り上げを上げないといけないという事情はほかの小売りと変わらず、そうするとフィーチャーされるのは、もともとのベストセラーや映像化作品のような話題作が中心となり、そこに売る側の思い入れが入り込む余地はなかなかありません。そうすると自然に売れるものと売れないものの格差が大きくなる。

 これは電子書店の特性というよりも、デジタルコンテンツの特徴と言うべきでしょう。よく指摘されることですが検索サイトの検索結果も2ページ目以降は参照される確率が大きく減りますし、音楽やコミックのダウンロード販売でも、トップページに来ないものはなかなか売れないものでした。

 しかしそうすると、電子の世界はあくまでリアルの映し鏡。電子と紙では状況は変わらないということになります。

 私は、電子書籍に開拓してほしい「第三極」のモデルとして、音楽が参考になるのではと感じています。

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