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電子書籍で世界がもっと楽しくなる方法を考えよう 「売れる・売れない」を超える「第三極」のために部屋とディスプレイとわたし(4/5 ページ)

» 2012年12月21日 16時00分 公開
[堀田純司,ITmedia]

思い入れにアフィリエイトで報いる仕組みはどうか

 そのカギとして、こんな提案はいかがでしょうか。

 以下は2010年12月に刊行された電子書籍「今晩から電子作家デビューできる本」(現在は電子絶版中)で、すでに語っていたことなのですが、私にとって大事なことなので2度言います。

 電子の世界を回転させる鍵として、各書店はもっと積極的にアフィリエイトを活用したほうがよいのではないでしょうか。屈指の販売力を持つAmazonは、なにもサイトの表示領域だけがその売り場ではありません。整備されたアフィリエイトのシステムで売り場を拡大しているわけで、その存在感はネットの世界に「アフィリエイトブログ」といった業態(?)まで成立させてしまうほどです。

 そのアフィリエイトのシステムをただ整備するだけではなく、一層弾力的な運営を行うのはどうか。たとえばアフィリエイトの報酬を、思い切って著者印税の50%などにするオプションをもうける。配信手数料を引いた収益を、著者とアフィリエイターがシェアするというシステムです。

 報酬が大きければ、そのタイトルを紹介しようというインセンティブになる。また、自然とベストセラーよりマイナーなタイトルのほうが料率がいいということになるでしょうから、マイナーでも自分が好きだったり、著者の将来性を感じる本を紹介するモチベーションにもなる。そしてこれは願望なのですが、こうしたオプションがあれば「電子書店小売」という業態が成立するかもしれない。

 たとえば自分が「ゾンビ小説」が好きだとして、大家だけではなく、自分が発掘した新人や、埋もれてしまっていた佳作ゾンビ小説を発掘して紹介する。もともと現在の書店でも利益は2割程度な訳ですから(本の世界は各プレイヤー、薄利多売の世界なんです。取次とか大出版社がガメているという話ではありません)、幅広い料率があれば「電子書店小売」が成立するかもしれません。私でしたら、自分の本を売ってくれたら印税の半分を(それ以上でも)シェアしてまったく問題ありません。ぜひお願いしたいくらいです。

 そしてもし「電子書店小売」を運営する人が、自分が紹介した新人や著者に、ユーザーの感想や、売れ行き情報などをフィードバックしたら、それはもう編集活動以外のなにものでもありません。こうした領域から、面白いものが出てくるのではないでしょうか。

 実際、すでにいわゆるアキバ系のニュースサイトなど、運営者の思い入れでもってさまざまなコンテンツが紹介されているサイトがあります。もし著者と公式にパートナシップを結ぶことができるようなオプションがあれば、より楽しく、より思い入れが機能する分野になっていくかもしれません。

 もともと日本のネット小売でもAmazonと違ったアフィリエイトのシステムを整備し、分野によってはそちらのほうが強いこともあるわけで、決してできない話ではないと思うのです。

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