ついにAmazon/Kindleストアのサービスがはじまり「黒船もとうとう来た。それどころかペリーも上陸しちゃったよ」という状況の電子書籍。思えば2010年になるiPadの発売以来、何度かのうねりを迎えながらもまた注目を集めています。
しかしそこで私が気になるのは「日本の各プレイヤーは、いったいどんなヴィジョンを電子書籍に描いているのだろうか」という疑問。みんなどんな展開を、電子書籍に求めているのでしょうか。
潜在顧客の発掘でしょうか。ネット経由で購入する電子書籍ならば、書店に足を運ぶ習慣のない人にもリーチできるかもしれません。
価格破壊でしょうか。流通在庫を持たない電子書籍は、紙よりずっと安くなるのかもしれません。
データ化による利便性でしょうか。物理メディアである本は、置き場所をとる。“自炊”までしてデータ化する人が出てくるのも必然でしょう。
どんな方向でもいいと思うのですが、日本のプレイヤーからは、あまりヴィジョンが聞こえてこない気がするのです。
この点で、さすがに明確に展望を打ち出しているのがAmazonのジェフ・ベゾスで、彼は電子書籍の未来についてこう語っています。
「これまで出版されたすべての書籍がたった1分間で入手できるようになることだ。これが実現したらどれほどクールだろう!」(『東洋経済』11月3日号巻頭インタビュー)
ユーザーの利便性を追求して他サービスとの差別化をはかってきたAmazonらしく、“読み手”目線の未来図ですね。
一方、よくも悪くもそこが個人のカリスマ性に依存しない日本のメーカーという気もしますが、日本ではあまりそうしたヴィジョンは語られない印象を受けます。しかしただ紙を電子化して、紙の秩序を電子の世界に持っていくだけであれば、紙の(あまりいい話を聞かない)状況をそのまま電子に輸出してしまうだけではないかと、私などは心配してしまいます。
もっとも私自身、2010年より文芸や学芸。それにデジタルメディアや、さらには文章を発表するのは初めての著者など多彩な方々と「AiR(エア)」という書き手発の電子書籍をつくっており、この分野の展開は人ごとではありません。むしろ「そう言うおまえはどうなんだ? どんな展望があるんだ」という話なのですが、私の場合は「二極化する出版の世界で、新たな選択肢を獲得したい」と考えて取り組んでいます。要するに、紙とは違う形でも才能や作品が出てくる「第三極」が成立してほしいと。
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