「相当厳しいだろうな、と」――1月24日、ミクシィ執行役員に新たに就任した元はてな副社長の川崎裕一さん(36)は、社外からmixiを見ていた時の印象を率直にこう語る。同社は同日、川崎さんを含む3人を新たに執行役員に任命。「すべての人に心地良いつながりを提供する」という原点に立ち返り、ユーザーの声に耳を傾けながらサービス改善をスピードアップしていくという。
川崎さんは、元はてなの副社長で、ソーシャルサービス「Livlis」などを手がけるkamadoの創業者。kamadoは昨年12月にmixiに買収されており、川崎さんはkamado社長とミクシィ執行役員を兼任する。ミクシィでは「クロスファンクション室長」として、「mixiプレミアム」など課金サービスのブラッシュアップや、SNSとゲーム、広告といった事業の横連携などを担当する。
2008年に新卒でエンジニアとして入社し、直近までメディア統括部長を務めていた廣木大地さん(29)と、ゲーム事業部長の森田仁基さん(36)も新たに執行役員に就任。廣木さんはmixi事業全体を見る「ユーザーサービス本部長」に就任、森田さんはゲーム事業部長を継続して務める。
2004年のスタート以来ユーザーを急拡大させ、一時期は国内最大のSNSとして高いアクティブ率を誇ったmixiはここ数年、ログインユーザー数の減少が続くなど苦戦している。「競争環境が変わっていることは認めないといけない。9年前にはFacebookやTwitter、LINEはなかった。9年前に作った人間関係も変化している。今のユーザーのライフスタイルに適合したものかという課題はあるだろう」と、川崎さんは苦戦の背景を分析する。
進学や就職など、ユーザーのライフステージによってソーシャルグラフは変容する中で「ユーザーの求める価値を提供しきれてなかった」(川崎さん)部分もある。現在のアクティブユーザーの中心は、都市部の若年層(10代〜20代前半)で学生も多く、「人間関係が複雑化していない」(廣木さん)ライフステージにいる人だ。
一方で、「蓄積してきたユーザー同士のつながりが一番の強み」(廣木さん)でもある。「外部環境の変化で、その蓄積がわれわれを苦しめている側面もあるが、蓄積があるからこそできるコミュニケーションもある」(廣木さん)。例えば昨年の年末年始、1年前や2年前の日記を提示した上で、日記を書こうというキャンペーンを実施したところ、1年前の日記にコメントが付いて盛り上がるといったことが起きたという。
「ソーシャルグラフは新鮮な方がホットだが、ホットであれば居心地がいいというわけではない」(廣木さん)。新体制では、就職や進学で人間関係が変化しても心地良く使い続けられるような仕組みを工夫するなど、ユーザーの声を聞きながら、心地良いコミュニケーションが行える場を改めて構築していく方針だ。
一時期ほどの勢いはないとはいえ、スマートフォンアプリ「mixi Touch」の月間ログインユーザーは800万人を超えるなど、活発に利用するユーザーも多い。「スマートフォンからのアクセスは国内トップクラス。ミクシィがアピール下手なところもあるが、継続して利用してくださっている方もいる。まだ、十分に力を発揮していくことができる」(川崎さん)
利用者の声を聞き、機能を改善する「ユーザーファースト」を徹底していく。同社は昨年8月、「ユニット制」を導入。「つぶやき」「日記」「コミュニティ」など機能ごとに少人数のユニットを組み、要望をスピーディに各機能に反映。mixiに機能要望を伝えるサービス「mixi機能要望」に投稿された要望のうち、これまで約5000件に返信し、対応を進めているという。要望の多いものについては、ユーザーを呼んでインタビューし、生のニーズの把握に務めている。
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